ネコ・かわいい殺し屋…ピーター・P・マラ、クリス・サンテラ著 築地書館 2400円/奄美のノネコ…鹿児島大学鹿児島環境学研究会編 南方新社 2000円

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ネコを野に放つと…

 評・三中信宏(進化生物学者)

◇Peter P.Marra=米国の鳥類学者◇Chris Santella=米国のサイエンスライター。新聞・雑誌などに執筆。
◇Peter P.Marra=米国の鳥類学者◇Chris Santella=米国のサイエンスライター。新聞・雑誌などに執筆。

 家畜動物としてのネコは、人間と一定の距離を保ちながら生活している。そんな“無頼”に生きるネコたちを猫可愛かわいがりする愛猫家は少なくないだろう。その一方で、ネコは国際自然保護連合の「侵略的外来種ワースト100」リストに入るほど悪名をとどろかせている兇悪きょうあくな有害動物でもある。

 『ネコ・かわいい殺し屋』では、人間の生活圏の外に出て自由に動き回り自由に子猫を生むノネコ――本書では「野放しネコ」と呼ぶ――が、ネコ本来の強い繁殖力と高度な狩猟能力によって、鳥類など他の野生動物を捕食し絶滅に追いこんだ深刻な事例がいくつも挙げられている。過去の研究の蓄積により、ネコによって数多くの野生動物が今まさに存亡の危機に立たされていることは誰にも否定できない。

 野放しネコ問題に対してはいくつかの解決策があり得る。捕獲したノネコに不妊去勢手術をして放す「TNR」は広く普及してはいるが、個体数がすぐに減るわけではなく捕食が長期間続くので効果は薄い。ネコを効率的に“駆除”するために、毒餌をまいたりわなを仕掛けて捕獲殺処分したり、はてはライフル銃で射殺する“軍事作戦”を展開して一網打尽にしたケースも諸外国ではある。しかし、動物愛護の観点からいえば、野放しネコへのこのような強硬手段には根強い反発があることも事実で、駆除賛成派と反対派が真っ向から対決する“代理戦争”の様相すら呈している。岡奈理子・山田文雄・塩野崎和美・石井信夫訳。

 日本におけるノネコ問題については鹿児島大学の地域貢献活動報告書である『奄美のノネコ』にくわしく報告されている。その解決には、国や地域ごとの動物倫理観の文化的差異を踏まえつつ、科学的知見の社会的受容のあり方をも考慮する幅広い文脈の中でねばり強く論議していく必要があるだろう。ノネコ問題は人間側の問題でもあるから。

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627967 0 書評 2019/06/09 05:00:00 2019/06/17 10:54:30 ネコ・かわいい殺し屋・奄美のノネコ(3日午後3時45分)=関口寛人撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190608-OYT8I50056-T.jpg?type=thumbnail

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