読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

ディストピア・フィクション論…円堂都司昭著 作品社 2600円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

古典、話題作 幅広く

 評・宮部みゆき(作家)

◇えんどう・としあき=1963年生まれ。文芸・音楽評論家。『「謎」の解像度』で日本推理作家協会賞など受賞。
◇えんどう・としあき=1963年生まれ。文芸・音楽評論家。『「謎」の解像度』で日本推理作家協会賞など受賞。

 ユートピアとは、トーマス・モアの小説の題名に由来する造語で、「どこにも存在しない理想の社会」を意味している。一方、その反対語として使われているディストピアは、フィクションの中には数多あまた存在しており、私たちはそういう反理想的社会についてよく知っている。多くの小説やコミックや映画のなかで繰り返し繰り返し活写されるディストピアを享受してきたからである。

 フィクションに限っては、人はユートピアよりもディストピアが好きだ。その心理は、ホラー小説や絶叫マシンを楽しむ心理に似ているのかもしれない。エンタテイメントとして「死」を疑似体験することで、私たちは命の価値をみしめ、平凡な日常の輝きを見つめ直すことができる。それと同じメカニズムで、「お話」としてのディストピアに浸ることによって、自分が身を置いている現実の良いところを再確認し、フィクションのディストピアが未来の現実にならないようにするには何を心がけるべきなのかと考える機会を得る。

 本書は四百ページを超える大著だ。分析と評論の対象とされているディストピア・フィクションは、小説では古典の『一九八四年』から『図書館戦争』『わたしを離さないで』『カエルの楽園』など近年の話題作までと幅広く、短編にも目配りしている。映画では「メトロポリス」「ブレードランナー」から「君の名は。」「ズートピア」「シン・ゴジラ」――「ズートピア」のどこにディストピア要素があるの?と、謎解きミステリーを読むような興味をかき立てられる。膨大な数の作品が登場するので、(実際に私はそうしたのだが)本書を読んでから逆戻りで実作に触れることも多くなるだろう。つまり、本書は優れたエンタテイメント・ガイドでもある。一度通読するだけで終わらず、折々に読み返して糧となり、何より「面白い!」評論集だ。

無断転載・複製を禁じます
627970 0 書評 2019/06/09 05:00:00 2019/06/17 10:54:17 ディストピア・フィクション論(3日午後3時48分)=関口寛人撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190608-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)