スペイン巡礼 緑の大地を歩く 渡辺孝著 皓星社 2000円

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◇わたなべ・たかし=1950年生まれ。日銀勤務を経て大学教授に。著書に『不良債権はなぜ消えない』など。
◇わたなべ・たかし=1950年生まれ。日銀勤務を経て大学教授に。著書に『不良債権はなぜ消えない』など。

 

生きていることを実感

 評・宮下志朗(仏文学者 放送大客員教授)

 聖地や霊場をめざす「巡礼」がちょっとしたブームだ。海外ならやはり、キリスト教三大聖地の一つスペイン北部のサンティアゴ・デ・コンポステラへ。美しい自然と点在する小さなロマネスク教会、魅力満点だ。

 私大理事長だった著者は、大学改革を実行せんとして孤立無援となり、辞任する。その前に読んだスペイン巡礼に関する本で、青春時代に欧州を一人旅した際の感動を再びと思いが募る。68歳になった昨年、ツアーでの短期巡礼を経て歩き始める。

 丹念に日記をつけたのだろう、読んでいていっしょに巡礼している気分になれる。ルートさながらに起伏に富む日々は、しばしば道をまちがえるし、30キロ歩く日もあれば、「今日は日曜日。軽めの距離をゆっくり」の日もある。巡礼2日目にピレネー山脈の下りで早々と膝を痛めると、次の目的地へはタクシーで移動し、2泊休む。再開するとすぐ必需品の帽子をなくし、食料品店で紙製の帽子を何とか見つける。失敗か寄り道か、順調な旅ではないことが本書の魅力だ。夕食を一人静かに食べようと思っても、同席者ができるのが旅の常。で、気持ちを切り替えて、楽しく会話しながらワインを空ける。

 コンポステラ到着後、聖堂をのぞくが、つるした大香炉を振る有名な儀式を見られない。列車で大西洋岸のホテルまで行くが、翌日引き返し、運良く儀式を目にする。巡礼を通し、「生きている」ことを実感し、「人生のおり」も排出できたらしい。お遍路さん経由の人も多いという。

 全行程780キロを34日間で踏破。列車・タクシーでの移動を含めてだが、こういうゆるい巡礼なら好ましい。宿も巡礼向けの安宿(最低7ユーロ=約910円)から五つ星ホテル(266ユーロ=約3万4600円)までさまざま。余剰荷物の搬送方法のコラムもある実用ガイドで、美しいカラー写真も満載。以前、詳しい仏語ガイドブックを買って読んだことがある私は、スペイン巡礼を見果てぬ夢に終らせまいと決意した。

無断転載禁止
639903 0 書評 2019/06/16 05:00:00 2019/06/24 11:39:32 書評用 スペイン巡礼(7日、社内で)=今野絵里撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/06/20190615-OYT8I50054-T.jpg?type=thumbnail

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