物語は人生を救うのか…千野帽子著

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評・山内志朗(倫理学者、慶応大教授)

 物語・ストーリーは、人間が世界に生きていくのに不可欠な枠組みだ。悪いことが起きたとき、それが誰の責任なのか分からないと安心できない。「なぜ」という疑問が物語を要求する。

 物語は危険なものにもなる。自分を不幸な主人公として悲劇的にしか構成できないような粗筋が刷り込まれてしまった場合がそうだ。破壊的に振る舞うことになる。

 心の中に欠落を見つけ、それを埋める人生を追い求めることは自分も他人をも壊しがちだ。幼児期に虐待を経て成長した人は、「自分はこの世界に受容されていない」という被排除感に拘束されて暴力をふるったりする。

 しかし、物語こそ人生に一貫性を与え、充実感と幸福感を可能にする必須の構成要素でもある。

 「物語」が人生において持つ途方もない重要性と、その人生を破壊してしまう危険性と、そして物語が救いをもたらすことをも示す人生論の名著である。人生を構成するための深い論理を教えてくれる本だ。知的な興奮に満ちている。人生に悩む若者のための必読書として勧めたい。(ちくまプリマー新書、840円)

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711906 0 書評 2019/07/28 05:00:00 2019/08/05 10:53:17 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190805-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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