日本婚活思想史序説…佐藤信著

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東洋経済新報社 1800円
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私的領域から国を問う

 評・森 健(ジャーナリスト、専修大非常勤講師)

 婚活という言葉が生まれたのは2007年。昔から結婚活動はあるが、その意識は専業主婦が主流の時代と共働きが主流の現代では異なる。

 本書は、東大先端研の若手政治学者が婚活をめぐる考え方の変化を70年代から現在まで検証したものだ。

 著者は昨今の専業主婦志向を、男女ともにもつ「働きたくない」という労働逃避と指摘。その上で雑誌などのメディアを通じて70年代からの結婚への意識変化を確認していく。

 70年代は「見合い・恋愛混合型」が主流だったが、80年代初頭から女性で志向性の変化が表れる。自由を重視して結婚を拒否する立場と不幸があったとしても結婚を求める立場。バブル期には仕事も遊びも楽しむ恋愛至上主義の価値観が登場し、結婚から遠ざかる。この頃は結婚というものの理解も大雑把な感覚だ。

 だが、2000年代になると「結婚とは『カネ』と『カオ』の交換」という身も蓋もない視点が広がる。また、ネットで条件を指定して相手を探すマッチングサイトも広がる。自身をブランディングするマーケティング的な考えが出てきた婚活だ。

 数十年の変遷を追うと、女性が結婚という人生の一大事に主体的に取り組み、条件に合う相手を探すようになった変化が見えてくる。

 同時に、本書で特筆すべきは「国家と結婚」に言及した終盤の章だ。

 現在の日本で少子化は大きな政治課題だが、少子化対策基本法は03年までできなかった。背景には戦時中の「産めよ殖やせよ」へのトラウマがあったためだ。また、国家が想定する結婚=法律婚を再考するような議論も放置されてきた。だが、人生が長期化する中、婚外恋愛や事実婚、婚外子といった選択も記述することで、著者はさらなる議論を示唆している。「結婚や出産や育児は『私』事ではなく『公』事になる」からであり、「私的領域を通じて国家を問い直す」ことになるからだろう。

 婚活という断面から世相や政策のあり方を問い直せる面白さがある。

 ◇さとう・しん=1988年、奈良県生まれ。東京大先端科学技術研究センター助教。専門は日本政治外交史。

無断転載禁止
711909 0 書評 2019/07/28 05:00:00 2019/08/05 10:59:01 日本婚活思想史序説(19日、読売新聞東京本社で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190727-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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