イメージ学の現在…坂本泰宏、田中純、竹峰義和編

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東京大学出版会 8400円
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図像からみた知の根源

 評・三中信宏(進化生物学者)

 本論文集は、2016年に東京大学駒場キャンパスで開催された「イメージ学(ビルトヴィッセンシャフト)」に関する国際シンポジウムの講演録だ。ドイツ発祥のこの新しい学問分野は図像や形象に関する意味あるいは行為についての考究を目指している。そもそも「イメージ学」というネーミングはつかみどころがなさすぎるのではと私は感じるが、この領域横断的な学問の射程がきわめて広いことの当然の帰結なのだろう。

 私が専門とする分類学や系統学では、生物多様性を図示するために昔からさまざまなダイアグラム(包含図や系統樹やネットワーク)を用いて、複雑極まりない生物界の様相を可視化しようと試みられてきた。この「ダイアグラム論(ディアグラマティーク)」もまた本書の「イメージ学」の中に包含される。

 本書では、大作<ムネモシュネ・アトラス>の作者アビ・ヴァールブルクの図像解釈学など美術史の事例、生物学分野で描かれてきたさまざまな図像の分析、神経科学・認知科学への発展の試み、さらにはCGアニメ・写真・映画のメディア論そしてコンピューターのユーザーインターフェースにいたるまで、現在のイメージ学が到達した最前線を幅広く見渡すことができる。

 その一方で、広大なイメージ学の最先端を読者が読み解くためには総論的な予備知識がある程度はあった方がいいだろう。幸いなことに、本論文集でいくつかの基調論文を寄稿しているホルスト・ブレーデカンプの著書『ダーウィンの珊瑚さんご』が法政大学出版局からすでに邦訳されている。イメージ学に開眼するためにぜひどうぞ。

 取り上げられる図像は章によって抽象的だったり具象的だったりするが、それらの図像のもつ能動的な作用をめぐるイメージ学の観点からの解読は新鮮だ。図像が生み出すさまざまな“知”はわれわれをつねに刺激し啓発し続ける。

 ◇さかもと・やすひろ=独マックス・プランク経験美学研究所シニアリサーチフェロー

 ◇たなか・じゅん=東京大教授

 ◇たけみね・よしかず=同大准教授。

無断転載禁止
711920 0 書評 2019/07/28 05:00:00 2019/08/05 10:57:30 イメージ学の現在(19日、読売新聞東京本社で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190727-OYT8I50035-T.jpg?type=thumbnail

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