世界地図を読み直す…北岡伸一著

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

新潮選書 1300円
新潮選書 1300円

日本を考え直す契機に

 評・篠田英朗(国際政治学者、東京外国語大教授)

 日本外交史の大家で、現在はJICA(国際協力機構)理事長を務める著者が、世界各国を訪問した際に見聞きし、感じたことをまとめたユニークな1冊である。20か国以上の国々への訪問の記録が、興味深い叙述でつづられている。一般読者にとっては、扱われている国々の数が多すぎるかもしれない。しかし、それでも世界中を駆け回る著者にとっては、ほんの一部の紹介である。むしろ気楽に旅行エッセーを楽しむ思いで読んでみよう。そのほうが、著者のメッセージを、よりよく捉えていけるだろう。

 実際に足を運んで世界各地の地域情勢を観察することによって、地理的条件を重視した政治学としての「地政学」が、よくわかるようになる。その意味では本書は、まさに「地政学」の本である。著者は、「地政学」的眼差まなざしを持って「世界地図を読み直す」ことの大切さを伝えようとしている。

 だが、それだけではない。歴史家である著者の眼差しは、訪問先の国々の歴史に、常に深く注がれている。興味深い各国の歴史的逸話や人物が、次々と紹介されていく。著者は、地理と歴史の双方をふまえ、「時空を縦横に比較して考えること」の大切さを伝えようとしている。

 さらに本書は、世界地図と世界史における日本の位置を見定め続ける。著者は、訪問先の国が、地理的・歴史的な観点から、日本とどう関わっているのかを、要領よく語り続ける。さらに、訪問先の国が日本に示してくれる教訓を明らかにしようとする。そして各国における日本の援助の意味を考察する。JICAの援助哲学や、日本の外交政策の現場の様子も紹介されている。つまり本書は、日本を考え直す契機としても鮮やかな仕上がりを見せている。

 当代一流の日本外交史家であり、日本最大の国際協力組織の長でもある著者は、現代日本において稀有けうな存在だ。本書は、その著者の思考にふれることができるまさに稀有な一書である。

 ◇きたおか・しんいち=1948年生まれ。東京大名誉教授。国連大使などを歴任。著書に『自民党』など。

無断転載禁止
711923 0 書評 2019/07/28 05:00:00 2019/08/05 10:56:59 世界地図を読み直す(19日、読売新聞東京本社で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190727-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ