未来のアラブ人 リアド・サトゥフ著…花伝社 1800円

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◇Riad Sattouf=1978年パリ生まれ。父はシリア人、母はフランス人。コミック作家、映画監督。
◇Riad Sattouf=1978年パリ生まれ。父はシリア人、母はフランス人。コミック作家、映画監督。

他文化への関心つなぐ

 評・一青 窈(歌手)

 この漫画は1980年前後にリビア、シリア、フランスで育った作者の誕生から6歳までの自伝である。社会情勢に翻弄ほんろうされ、親が住空間を転々と変える中、淡々と子供時代を過ごし、端から見れば波乱万丈に見えるのだがユーモアたっぷりに描かれている。映画監督でもある彼は、絵の才能に幼少からけていたそうで、その記録が独特で面白い。配給で食事をしのいだり、リビア最高指導者として独裁政治を行なったカダフィ政権下では、イエメン人とインド人の友達と遊んで幼少を過ごす。しかしどこの街でも風は吹き、レジ袋が舞う光景があるのだと共感が持てたり、シリアにて近所のおばさんが雨の中、赤ん坊をコンクリートの上に寝かしながら洗濯物を干し、終えると足をつかんで抱き抱え、何度もキスをするという一コマがあって、衝撃的だったがまたそこに全世界に共通する変わらぬ母の深い愛を感じ取れて、ホッとした。

 独裁政権=悪のイメージや、内戦や空爆、難民のニュースも相まってシリア・リビアは遠いどこかの世界で実生活までは想像を巡らしたことが無かったので、支援団体“ピースオブシリア”の代表中野貴行さんに話を伺った。JICAの隊員として彼は2008年から現地の田舎で平和なシリアを2年間味わった。食料も薬も自給自足で潤沢に賄われ、バスで隣り合わせた見知らぬ人の運賃を誰かが肩代わりしたりと、他宗教に差別も区別もなく、豊かさを分け与え合ういい空気を体感したそうだ。

 現地の少女に励まされた彼と同じく、私も渡航する第三世界の子供にいつも学びや勇気をもらう。どんな状況下でも夢を持ち、笑顔でキラキラと遊び、生き抜く力は子供こそが持てる強さであり、未来の希望の光である。何か悲惨なニュースを見てから動くのも勿論もちろん良いが、何もない平和な状況を知るということは他文化、他国への関心、そして理解につながる。この本もそんな1冊だと思う。鵜野孝紀訳。

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760864 0 書評 2019/08/25 05:00:00 2019/09/02 10:34:14 「未来のアラブ人」書評用(22日、東京本社内で)=西孝高撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/08/20190824-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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