私のカトリック少女時代 メアリー・マッカーシー著 河出書房新社 2400円

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信仰を言葉で解剖する

評・村田沙耶香(作家)

◇Mary McCarthy=1912~89年。米国生まれの作家。著書に、『グループ』『アメリカの鳥』など。
◇Mary McCarthy=1912~89年。米国生まれの作家。著書に、『グループ』『アメリカの鳥』など。

 「信仰」がある環境で育つとはどういうことなのだろう、と想像することがある。私の家は、漠然と神様やご先祖様の話はしても、仏壇はなく、毎日祈ることもなかった。友達から教会へ行くといわれ、それはどんな感じだろう、と想像した。そんな自分を、どこかで自分の「かみさま」が見ている気がしていた。

 『私のカトリック少女時代』は、作家メアリー・マッカーシーが12歳で信仰をなくした自身の少女時代についてつづったものをまとめた回想記である。なんとも不思議な構造をした本だ。冒頭で、これが回想記であることと、「でっちあげたのかどうか、自分でもわからない場合がある」ことが同時に告げられる。最後の一篇いっぺんを除き、全ての章の最後に、冷静に分析した彼女自身のコメントが付け加えられている。

 自分の記憶が不確かだったり、無意識の誇張があったりしないか、彼女は恐ろしいほど真摯しんしに見張っている。優れた短編小説のような回想記に引きずり込まれては、冷静な分析にひっくり返されたりするわけだが、最初は奇妙に思えたその構造が、記憶の中の現実を保存するとはこういうことなのではないか、と思えてくる。

 彼女はまさに「信仰」がある環境で少女時代を過ごす。冷静な「分析」は少女時代から変わらず、周りの大人の狼狽ろうばいや細かな行動を観察する利発な眼差まなざしには爽快な気持ちにさせられる。自己分析もすさまじい。何しろ、人気者になろうとして「信仰を失いました」とうそをついた彼女は、神父との対話のあと、「もしかして、私は本当に信仰を失ったのではないか」という恐ろしい考えに行きついてしまうのだ。

 少女は観察者であり、分析者であり、大人になっても自分が紡いだ言葉を解剖し続ける。少女は真実を「信仰」している。そのまったく自分を誤魔化さない、揺るぎない姿勢に、とてつもなく励まされる。自分の「信仰」は一体何なのだろう、と強く考えさせられる。若島正訳。

無断転載禁止
784235 0 書評 2019/09/08 05:00:00 2019/09/17 16:11:49 「私のカトリック少女時代」(15日、本社で)=佐々木紀明撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190907-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

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