日本史に学ぶマネーの論理 飯田泰之著 PHP研究所 1600円

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「貨幣とは何か」を問う

評・坂井豊貴(経済学者・慶応大教授)

◇いいだ・やすゆき=1975年生まれ。エコノミスト、明治大准教授。著書に『経済学講義』など。
◇いいだ・やすゆき=1975年生まれ。エコノミスト、明治大准教授。著書に『経済学講義』など。

 異次元の金融緩和が続くなか、キャッシュレス化は進展し、ビットコインは新型の貨幣として注目を集めている。お金をめぐるこうした社会変化は激しく、我われの貨幣観も見直しを迫られている。そうしたなか本書は、あらためて「貨幣とは何か」を問い直す。貨幣を貨幣たらしめる要因を歴史のなかに探る。

 たとえば奈良時代、政府は和同開珎を発行した。ところが人々は同じ額面の銭でも、より重いほうに高い価値を認めた。『続日本紀』によると、政府はこれに対して、銭のり好みを罰する法令を定めたという。だがその方策も奏功せず、やがて和同開珎の価値は下がっていった。金属としての価値は、貨幣の価値を支えもするが、不安定性の要因にもなるのだ。

 また平安時代には、政府が改鋳の際に、「新貨は旧貨の10倍の価値」と置くことが多くあった。これは旧貨の価値を著しく損ねるもので、人々はそれを嫌い、代わりに稲や布で取引を行うようになった。政府が貨幣の価値を損ねていては、人々の信任は得られないのだ。貨幣が取引の媒介として機能するうえでは、それが政府発行である必要はなく、稲や布、はたまた私鋳銭でもよい。現代なら発行主体がない電子情報のビットコインでもよいということになろう。

 それでは政府発行の貨幣の強みは何なのか。著者は納税に注目する。政府発行の貨幣は、政府への納税に使えるのだ。それはまるでドラッグストアが発行したポイントが、そこでの買い物に使えるように。この用途の強みが人々に認められ、政府の貨幣が世に流通したならば、政府は貨幣の発行益を手にできる。

 著者は多くの事例をたどりながら、貨幣への知見を一つひとつ重ねていく。そこには現在の多様なお金の姿や、金融政策を理解する意図が添えられている。なめらかな文章は気軽に読み通すこともできようが、実に入念に作成された野心作であり、味読をすすめたい。

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784250 0 書評 2019/09/08 05:00:00 2019/09/17 16:13:56 「日本史に学ぶマネーの論理」 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190907-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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