わたしは哺乳類です リアム・ドリュー著 インターシフト 2600円

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生物進化の謎に迫る

評・加藤徹(中国文化学者・明治大教授)

◇Liam Drew=サイエンスライター。神経生物学博士。『ネイチャー』『ニュー・サイエンティスト』に寄稿。
◇Liam Drew=サイエンスライター。神経生物学博士。『ネイチャー』『ニュー・サイエンティスト』に寄稿。

 ヒトを含む哺乳類の生のかたちを決めているさまざまな特徴は、いつから、どのように進化してきたのか。

 生物学を研究してきた著者は、サッカーの試合中、股間にボールを受けて悶絶もんぜつし、ふと気づく。なぜ、こんな大切なものが体の外にあるのか。精子を体の熱から守るためという「冷却仮説」は、ゾウなど陰嚢いんのうをもたない哺乳類の存在を説明できない。その他、メスに見せびらかすため(ディスプレイ仮説)、こんなハンデはなんでもないと強さをアピールするため(ハンディキャップ理論)、精子を体外で鍛えるため(トレーニング仮説)、全力疾走で腹圧が高まったから(ギャロッピング仮説)などの諸説はどれも難がある。進化の謎は身近にもある。

 著者は、サッカーのせいで男性不妊症になったのではと悩むが、父親になれた。妻の出産の苦しみや、予定より8週間早く生まれた娘が自力で乳を吸うまでの苦労をまのあたりにして、哺乳類がこうなった理由を探求する。生殖、受胎、性の決定、哺乳、育児、歯や骨や体毛の形成、内温性の獲得、五感や脳の発達などについて、進化生物学の観点から最新の学説を紹介する。ヒト以外の動物もたくさん出てくる。哺乳類なのに卵を産むカモノハシ、性決定の染色体のシステムが個体群ごとに違うツチガエル、父親も母親も原始的な乳を作って子育てをするハト、等々。動物の多様性と適応ぶりを見ると、ヒトや哺乳類が最も優れた生物だという思い込みや、身体を脳のしもべと見なす偏見は、打ち砕かれる。

 最終章では、著者の家族の病気と死や、ダーウィンの10歳の愛娘まなむすめの死が彼の進化論に与えた影響も説かれる。

 私たちは自分の一生を生きる。それは哺乳類としての生であり、数十億年におよぶ生物進化の旅の途中でもある。人間を含むすべての生き物が、いじらしく見えてきた。梅田智世訳。

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784253 0 書評 2019/09/08 05:00:00 2019/09/17 16:14:31 「わたしは哺乳類です」 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190907-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

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