完了しました
台湾の書店をめぐる旅
評・三中信宏(進化生物学者)

日本の書店業界と同じく、台湾には「博客來」に代表される大規模ネット書店があり、「誠品書店」のような大手チェーン書店もある。以前、私は博客來から本を購入した経験があるが、繁体字を読み取る手間がかかるだけで、日本のアマゾンでの書籍購入とまったく同じお手軽さだった。その一方で、これらの大手書店に
台湾には店主の個性が光る独立書店がいくつもある。本書は台湾全土に点在する43の独立書店を紹介した掛け値なく魅力的なガイドブックだ。専門分野や営業形態はさまざまだが、数々の障害を乗り越えて独立書店を切り盛りする店主たちの生の声が印象的だ。楽観できない状況のもとで、彼らがどのようにして“実体書店”としての経営を続けているのかについて率直に語っている。そこには台湾がたどってきた複雑な歴史と現在の政治情勢の影も垣間見える。
ある書店主は「ここ数年間、台湾には文芸開花の風が吹いているように感じられる。景気が悪いと言われているにもかかわらず、それぞれの理想に満ちた小規模な書店は続々と、台湾のあらゆる街角に芽吹いている」と語っている。実にうらやましい。小粒でもきらりと輝く独立書店が生き続けられるこの島の「美しき島フォルモサ」というかつての呼び名を思い出す。
全編にわたって店内のカラー写真やイラストがちりばめられているが、