愛と欲望の三国志…箱崎みどり著

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 評・加藤 徹 中国文化学者・明治大教授

 すごい本だ。初心者もすらすら読めるやさしい語り口なのに、研究者もうなる高度な内容。著者は1986年生まれ。小学2年でNHK「人形劇三国志」にはまり、東大で「三国志」の論文を書いた。ラジオのアナウンサーとなった今も研究と学会発表を続けている。現代日本の学術振興のモデルとしても示唆的だ。

 日本人と「三国志」の縁は深い。邪馬台国の卑弥呼は、実は正史『三国志』の登場人物。古代の日本人は「三国志」を歴史の手本とした。『万葉集』も「三国志」の人物に言及する。江戸時代の民衆は「三国志」で自由に遊び、歌舞伎や浄瑠璃、英傑を遊女に置き換えたパロディ小説や春画すら作られた。明治には国家が目指す理想を担った。昭和の日中戦争下では大東亜共栄圏のための中国理解という名目でブームとなり、戦後も出版ブームは途切れなかった。著者が、吉川英治、柴田錬三郎、陳舜臣、北方謙三、宮城谷昌光の各氏の作品の背景を読み解く目は、鋭い。

 戦乱の時代も平和な時代も、ファンのどんな愛と欲望も受け入れてきた「三国志」は、やっぱり面白い。(講談社現代新書、860円)

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890630 0 書評 2019/11/10 05:00:00 2019/11/18 11:06:56 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191118-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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