昭和も遠くなりにけり…矢野誠一著 白水社 2500円

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◇やの・せいいち=1935年、東京生まれ。芸能・演劇評論家。著書に『志ん生のいる風景』など。
◇やの・せいいち=1935年、東京生まれ。芸能・演劇評論家。著書に『志ん生のいる風景』など。

終わりは必ずやってくる

 評・戌井昭人(作家)

 本書は、私の憧れの人がたくさんでてくる。けれどもほとんどの方がもうこの世にいない。小沢昭一、加藤武、永六輔。著者の矢野誠一さんは、毎月彼らと集まって句会をしていた。ときには吟行をおこない、海外にも行った。そのことが「東京やなぎ句会のこと いろいろ」の章でつづられている。メンバーは他にも江國滋、入船亭扇橋、神吉拓郎など、最大十二人いたが、いま残るのは柳家小三治さんと著者だけになった。もちろん、このような方々が集まっているのだから、句会といっても真面目にはならない。いや、ふざけるために集まっている感じだ。吟行は必ず珍道中になり、集まっても俳句そっちのけでうわさ話に興じる。矢野さんは「我が句会の席はちょっと名状しがたい雰囲気で」と書いている。この句会の名状しがたい噂を聞いたことがある。名状しがたいので、ここには記せないが、物すごく楽しそうだった。

 無駄といっていいのか馬鹿といっていいのかわからないけれど、他人からすれば理解できないことを追求している人々がいる。そのような酔狂な方々が集まって、遊んでいたら、そのまま続いてしまった感じだ。しかし、悲しいけれど終わりは必ずやってくる。

 昭和は、どんどん遠のいていくけれど、時代は流れるのだから仕方がないのだ。矢野さんは変にセンチメンタルにならず、気持ちの良い過去を教えてくれる。

 最後の章に載っていた「妻のいない日日」は、妻が亡くなってからの日常が綴られている。読んでいたら、ふいに涙がこぼれてしまった。これから先、終わりがあるのはわかっているが、それまで生活は続いていく。しかし悲嘆しなくて良い。平成も終わり、昭和はさらに遠くなったけれど、あえて令和を近づけるためにあくせくする必要はない。とにかく、終わりの日がくるまで、自分の好きなことを追求していれば良いということを教えられた。

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890645 0 書評 2019/11/10 05:00:00 2019/11/18 10:59:05 書評 昭和も遠くなりにけり(30日、東京都千代田区で)=川口正峰撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191109-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

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