21 Lessons 21世紀の人類のための21の思考…ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社 2400円

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激動を生きるヒント

 評・瀧澤弘和(経済学者 中央大教授)

◇Yuval Noah Harari=1976年、イスラエル生まれ。歴史学者、哲学者。ヘブライ大学で歴史学を教える。
◇Yuval Noah Harari=1976年、イスラエル生まれ。歴史学者、哲学者。ヘブライ大学で歴史学を教える。

 今日、自由民主主義を支えてきた信念が大きく揺らいでいる。また、AIなどの技術革新が社会を激変させる可能性がさまざまに論じられてもいる。本書は、こうした時代をどう捉え、どう思考し、どうあるべきなのかを説く。

 著者は『サピエンス全史』で人類の過去を分析し、『ホモ・デウス』ではその未来に警告を発した。本書では現在に焦点が当てられる。前半は前二著の主張に沿って、自由民主主義が動揺する状況を記述しているが、後半では、本書独自の主張が前面に押し出される。

 これまでハラリは、人間が主観とも客観とも異なる第三の現実――共同主観的現実――を創造する能力を持っていることを強調してきた。たとえば神話・宗教や、貨幣のような社会制度だ。ハラリは、過去を論じる際に、こうした能力が文明社会を可能にしてきたとして、それをポジティブに評価する一方で、人間の将来を論じる際には、その虚構性が人間を不幸にしてしまうとネガティブに捉える傾向があった。しかし、その価値転換がどうして起こるのか、わかりにくい点があったことも事実である。

 本書の説明によれば、人間は物語を制作し、その役割の一部を担うことに生きる意味を見出みいだそうとする動物である。しかし、この物語は決まって不完全で矛盾したもので、それにしがみつくことが人間を不幸にするという。

 ハラリは自由民主主義の物語が崩壊しつつある状況を逆手にとり、今こそ虚構による意味付与そのものに強く警戒すべきだと提案する。そこで持ち出されるのが、生に意味はなく、人はどんな意味も生み出す必要はないという仏教の教えだ。最終章では著者自身の個人的経験にも言及しつつ、瞑想めいそうの効用を説く。人の心がAIに乗っ取られそうな時代に、内面を見つめてひたすら観察すべきという提案は、新たなヒューマニズムにもつながる可能性を持っており、興味深い。柴田裕之訳。

 

 <注>原題は、21 Lessons for the 21st Century です。

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983085 0 書評 2020/01/05 05:00:00 2020/01/14 11:20:22 (20日、読売新聞東京本社で)=萩本朋子撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200104-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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