団地へのまなざし ローカル・ネットワークの構築に向けて…岡村圭子著 新泉社 2700円

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「新しい連帯」の萌芽

評・稲野和利(ふるさと財団理事長)

◇おかむら・けいこ=1974年生まれ。独協大教授。中央大大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は社会学。
◇おかむら・けいこ=1974年生まれ。独協大教授。中央大大学院文学研究科博士後期課程修了。専門は社会学。

 「団地」という言葉を聞いて思い浮かべるイメージは人それぞれ様々であり、そこには時代や環境といった要因が大きな影響を与えている。評者がまだ小学生だった頃、近隣の田んぼの中に出現しつつあったマンモス団地の圧倒的・無機的迫力に一種の恐怖を覚えたことを思い出すが、今日老朽化して建替えが進むその団地を見る時の心境はもう少し複雑である。

 本書は、正負の間で交錯してきた団地イメージについて考察すると同時に、1962年に入居が開始された埼玉県の草加松原団地とそこでの人々の暮らしぶりなど今日までの変遷を辿たどることにより、団地という視点から日本社会が現在直面している課題を捉える。

 高度経済成長期に建設された団地は、当初ホワイトカラーのステイタス・シンボルであったが、老朽化とともにイメージは変わっていく。草加松原団地においては度重なる水害に見舞われるなど苦難もあった。2018年には建替え事業が完了するが、近隣駅名から「団地」という単語が姿を消すといった象徴的事態も発生する。今日的には、単身・高齢者世帯の増加、災害弱者としての高齢者、孤独死、多国籍化・多言語化といった問題が取り上げられ、フィールドワークにより明らかになった団地内相互扶助や、団地外の人間も含めた「新しい連帯」の萌芽ほうがが育まれる様が紹介される。

 草加松原団地に近接する独協大学の研究者である著者の団地に対する視線はあくまでも温かい。「団地をはじめとする『私たちの場所』に張りめぐらされたローカルなネットワークと、ゆるやかにつながるひとびとのコミュニケーション活動は、現代の都市社会で私たちが心地よく生きるために必要な資産といえよう」という著者の主張は一見当たり前だが、本書に記された活動が「地域と大学の連携」という形でのローカル・ネットワーク構築の実践事例でもあるがゆえに説得力に富む。

無断転載禁止
1019885 0 書評 2020/01/26 05:00:00 2020/01/26 05:00:00 団地へのまなざし(10日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200125-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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