ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀 エリック・A・ポズナー、E・グレン・ワイル著

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市場設計で経済改革

評・瀧澤弘和(経済学者 中央大教授)

東洋経済新報社 3200円
東洋経済新報社 3200円

 近年、経済学の評判は芳しくない。だがケインズが言うように経済思想は「それが正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えられているよりはるかに強力である」。

 最近の経済政策の書籍は、軽視されがちだった政治や社会の要素を考慮するものだった。本書はこれに対して、最新の研究成果を応用し、市場自体を徹底的に再構築しようとする「市場急進主義」の立場に立つものだ。この観点からは、市場原理主義などは過去に存在した理想的市場への郷愁に過ぎない。

 著者たちが依拠するのは、ここ数十年にわたって発展し、現実にも広く応用されてきたオークション理論である。これまで経済学者には、個別の市場設計は有効でも、経済全体の設計は難しいという感覚があったが、著者たちはオークション理論という個別市場の理論を経済全体に拡張しようとする。それが本書のなかでもっとも野心的な「共同所有自己申告税」の提案である。

 そこでは、財産所有者は自分の財産に対する自己評価額を設定・公表し、それに応じた資産税を支払う。しかし、この自己評価額を超える価格づけをする人が現れた場合には、その額でその買い手に所有権が移転する。これにより、資産はそれをもっとも高く評価する人に利用されるようになり、非効率性が解消する。課税ベースは資産なので、これを再分配することで格差も解消される。私有財産に対する考え方も変化するという。まずは政府保有資産から始めるべきと、改革の漸進的導入の方途も検討される。

 本書にはそれ以外にも、民主的な投票方法、国内対立を生んでいる移民制度、機関投資家が支配する株式市場、個人が対価なしに提供したデータで価値創造する巨大IT企業の問題に対して読みごたえのある改革提案がなされている。

 経済学者による久々の大胆な改革思想であり、一読に値する書籍である。安田洋祐監訳、遠藤真美訳。

 ◇Eric A.Posner=米シカゴ大学ロースクール教授◇E.Glen Weyl=米マイクロソフト首席研究員。

 <注>原題は「Radical Markets:Uprooting Capitalism and Democracy for a Just Society」です。

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1044518 0 書評 2020/02/09 05:00:00 2020/02/17 10:40:05 書評(24日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200208-OYT8I50027-T.jpg?type=thumbnail

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