中華民国と文物 張碧惠著

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文物保護の狙いと意義

評・佐藤 信(古代史学者 東京大名誉教授)

早稲田大学エウプラクシス叢書 4000円
早稲田大学エウプラクシス叢書 4000円

 台湾故宮博物院の華々しい文物は、中華民国の蒋介石が日中戦争・国共内戦のなかで命がけで守り運搬して、そば近くに維持してきた文化遺産といえる。

 本書は、辛亥革命で1912年に成立した中華民国が、国民統合を進める上で、清王朝の故宮文物などを、近代列強による流出・破壊の危機からどう守り、維持してきたかというテーマに取り組んだ、留学生の博士論文である。

 中華民国を、12年からの北京政府時代、27年からの南京国民政府時代と区分しながら、近代的な文物保護制度と保護体制の整備、そして国家的威信を示す近代博物館の創設が、どう展開してきたかを、史料にもとづいて明らかにしている。

 綿密な検証とともに、アイデンティティーとして文物を国家建設に利用する国民政府の志向や、海外から帰国した留学生の活躍などがしっかり指摘されている。

 故宮博物院の歩みは、北京政府時代の25年に設立されるも不安定で、その後南京国民政府の北伐後の28年に、北平故宮博物院として政府直轄下に設けられた。31年の満州事変の後、故宮の文物は33年に南京国民政府により南京に移された。37年からの日中全面戦争の時期には、さらに四川省へと西南疎開が行われ、同時に国民政府は国内外で展覧会を開いて、外交戦略と国民統合に役立てた。

 第2次大戦後の国共内戦で蒋介石が不利になると、48~49年には大量の故宮文物などが、台湾に運び込まれた。それが今の台湾故宮博物院の文物となっている。本書は、日本その他列強諸国に流出した文物の返還要求の問題についても、ふれている。

 中華文化の精華である清王朝の文物が果たす文化遺産としての国民的・国際的価値を知る為政者たちが、歴史文化を大切にしてきたことを、改めて気づかせてくれる。やや生硬な論文調もみられるが、若い意欲的な論述が貫かれていて、注目に値しよう。

 ◇ちょう・へきけい=立教大観光学部兼任講師。早稲田大大学院アジア太平洋研究科で博士号を取得。

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1044527 0 書評 2020/02/09 05:00:00 2020/02/17 10:40:35 書評(24日、読売新聞東京本社で)=稲垣政則撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200208-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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