シークレット・ウォーズ 上・下 スティーブ・コール著 白水社 各3800円

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見えなかった動き解明

評・篠田英朗(国際政治学者 東京外国語大教授)

◇Steve Coll=1958年生まれ。コロンビア大ジャーナリズム大学院長。ピュリツァー賞などを受賞。
◇Steve Coll=1958年生まれ。コロンビア大ジャーナリズム大学院長。ピュリツァー賞などを受賞。

 気鋭のジャーナリストが、アメリカのアフガニスタンにおける戦争の約15年間を追った。驚かされるのは、その描写の具体性だ。壮大な長編小説を読んでいるような気分になる。

 想像で、登場人物の心理描写を子細に行ったりすることはない。しかし代わりに、アメリカ、アフガニスタン、パキスタン政府高官の発言が、極めて具体的に再現されている。そのため、上・下巻をあわせて、千ページ近い字数の大著であっても、スピード感を持って読み進めることができる。様々な人物、様々な事件が、明晰めいせきな描写で、次々と立ち現れてくる。膨大な数の人々に対する入念な聞き取り調査の結果である。資料としても第一級の価値を持つ書だろう。

 アフガン戦争の特徴は、諜報ちょうほう活動においてのみならず、無人機による攻撃などで、CIA(米中央情報局)が大きな役割を担ってきたことだ。軍事機構とは別に行動するため、その動きは、ニュースですぐに取り上げられることはなく、本書のような地道な解明努力がなければ明らかになってこない。

 本書は、無人機による攻撃の方法などをめぐって、CIAの中でも職員同士の対立があったことも紹介する。無人機による攻撃の後、駐パキスタン大使がCIA支局長と口論する場面なども、臨場感あふれるやり取りだ。

 さらに本書が特筆するのは、パキスタンのISI(三軍統合情報局)の役割である。2001年9・11テロ事件の後にアフガン攻撃を決めたブッシュ政権は、表面的には協力姿勢を示すパキスタンを懐柔する態度をとった。だが結局は、タリバン勢力は、パキスタンへと逃れて、力を温存し、今日の勢力挽回へとつなげた。

 「アメリカ史上最長の戦争」をめぐっては、アメリカ政府のボタンのかけ違いも、何度か起こった。今日のアフガニスタン情勢は、いっそう混迷を極めるが、その経緯を知るための本でもある。笠井亮平訳。

 <注>原題は「Directorate S」です。

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1044533 0 書評 2020/02/09 05:00:00 2020/02/17 10:42:56 スティーブ・コール「シークレット・ウォーズ」上下(3日)=杉本昌大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200208-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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