動物に「心」は必要か 渡辺茂著

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 評・瀧澤弘和(経済学者 中央大教授)

 私たちは、ペットとの交流のなかで、動物にも私たちと同じような心があると素朴に信じている。しかし、それは科学的に裏付けられるのか。

 本書は、実験心理学に長年携わり1995年にピカソとモネを見分けるハトでイグ・ノーベル賞を受賞した著者による心理学史だ。しかしただの学説史ではない。動物に人の心を読み込んでしまう擬人主義への疑問が全体を貫く。

 心の科学的解明にかける著名な学者たちのアプローチの多様性には驚かされる。哲学や宗教、進化論、実験的方法、計算論の発展等々が研究者の思考に多様な仕方で影響してきたからだ。しかし、高名な研究者たちもしばしば擬人主義の誘惑には勝てなかった。

 著者の立場は反擬人主義だ。擬人主義を排しつつ、心という私的事象を観察可能にする工夫を凝らして「心」の解明を試みる。もちろん、一般人の素朴な擬人主義までは否定しない。人間が他者や他種に自分の心を読み込むのは、進化の産物だからである。

 研究者もまた人間的な思考のバイアスから逃れることが難しいのだと思わせる点が興味深い。(東京大学出版会、2700円)

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1067210 0 書評 2020/02/23 05:00:00 2020/03/02 10:25:11 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200302-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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