ルードルフ・オットー 宗教学の原点 澤井義次著 慶応義塾大学出版会 3500円

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聖なるものの非合理性

◇さわい・よしつぐ=1951年生まれ。東北大大学院を経て、ハーバード大大学院へ留学。天理大宗教学科教授。
◇さわい・よしつぐ=1951年生まれ。東北大大学院を経て、ハーバード大大学院へ留学。天理大宗教学科教授。

 評・山内志朗(倫理学者 慶応大教授)

 宗教の根源が何なのかは誰でも気になる。宗教現象学は人間の精神に現れる宗教の姿を探求する。その原点にあるのがオットー(1869~1937)の『聖なるもの』という古典的名著だ。彼の思想の全貌ぜんぼうを伝える解説書が出版された。

 オットーは聖なるものの中核に非合理性を見出みいだし、それを「ヌミノーゼ」という語で表現した。恐ろしさに身のすくむ感じ、不気味な禍々まがまがしさ、何だか分からないが、圧倒される感じだ。誰でも感じる身近なものだろう。戦慄せんりつさせるがするもの、ねつけるが同時にきつけるもの、対立し矛盾する感覚の並存こそ、聖なるものの中心である。この事象に関する精緻せいちで豊かで具体的な記述こそ、オットーの著書の圧巻部分だ。

 自己自身がちっぽけに感じられ無へ沈み消えていく感情は、「被造物感情」と語られる。自分が卑小なものと感じられるがゆえに、人は大いなるものに向かうのだ。聖なるものは、語りえぬもので、絶対的到達不可能性を有しているなど、心に響く様々な表現で記述している。宗教現象に接する人間精神の描写は鮮やかだ。

 オットーは、プロテスタントの神学者の側面に注目がなされてきたが、それに尽きるわけではない。彼の研究は、インドの宗教に出会って、様々な諸宗教を貫くものに開眼したところに起源がある。オットーのインドでの研究の様子を、澤井氏の本書は詳しく分かりやすく示している。

 オットーの著書は、キリスト教信仰や宗教的世界観が揺らいでいる状況で、宗教者としての不安に発していたのだが、彼の心はアジアへの旅を通じて、普遍的な宗教性の発見に至る。神秘主義の本質と非合理性をどのように学問的に分析するのか、に辿たどり着く。その描写は感動的だ。

 オットーの基本思想を辿ることは、宗教学の基本を学ぶことでもある。現在世界中で宗教観の対立から様々な紛争が起こり続けているが、人間歴史の根底を見つめるためにも重要な本だ。

無断転載禁止
1067213 0 書評 2020/02/23 05:00:00 2020/03/02 10:26:23 ルードルフ・オットー https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200222-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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