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琉球王国は誰がつくったのか 吉成直樹著

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改めて考え直す契機に

評・加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

七月社 3200円
七月社 3200円

 昨年10月、首里城が焼け落ちる姿は、沖縄県民に限らず多くの人に衝撃を与えた。

 首里城は、琉球王国の王府であったことは、誰もが知っていよう。しかし、私たちは琉球王国をどこまで知っているだろうか?

 実は、「琉球王国」がどのような背景と要因によって誕生したのか、今もさまざまな学説が唱えられ、琉球王国を打ち立てた思紹ししょう尚巴志しょうはし親子が何者かすらよく分かっていない。

 通説の琉球王国論では、農耕社会の成熟を基盤とし、対外的には中国(明)の海洋通商政策と結びついて王国が成立したとされる。

 しかし、このような内在的発展と対外的独自性によって王国が誕生したとする通説は、沖縄アイデンティティーを求める近代以降の社会思潮と無縁ではなかった。

 本書は、このような通説を真っ向から批判する。中国と朝鮮では王朝交替、日本では南北朝の動乱、激動の東アジアの視座に立って、東シナ海を跳梁ちょうりょうする倭寇わこうを切り口に、琉球王国は外在的要因によって誕生したと説く。

 とりわけ刺激的なのは、思紹・尚巴志が拠点とした佐敷上グスクと日本の城郭の共通性から、琉球と倭寇との深い結びつきを明らかにし、明による冊封が、王国としての認知ではなく、倭寇封じ込め策の一環だったと論じている点だ。

 さらに、本書は琉球史をめぐる今日的な問題も見逃さない。沖縄海洋博覧会以降の電通による行政・県民・メディアを巻き込んだ観光キャンペーンと通説とされる琉球王国論が、表裏一体の関係にあったとの指摘には思わず膝を打った。

 首里城の焼失は、私たちに琉球王国とは何だったのか、沖縄本島にとどまらず奄美群島から先島諸島まで含めて、改めて考え直す契機でもある。再建される首里城が、ただの観光施設とならないためにも、本書は一読の価値がある。

 ◇よしなり・なおき=1955年生まれ。元法政大教授。専門は地理学、民俗学。著書に『琉球の成立』など。

無断転載・複製を禁じます
1080038 0 書評 2020/03/01 05:00:00 2020/03/09 10:12:25 吉成直樹「琉球王国は誰がつくったのか」(22日)=杉本昌大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200229-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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