スクエア・アンド・タワー 上・下  ニーアル・ファーガソン著 東洋経済新報社 各2500円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

◇Niall Ferguson=米スタンフォード大フーバー研究所上級フェロー。著書に『マネーの進化史』など。
◇Niall Ferguson=米スタンフォード大フーバー研究所上級フェロー。著書に『マネーの進化史』など。

人的つながりの重要性

 評・篠田英朗 国際政治学者 東京外国語大教授

 本書の題名である「スクエア・アンド・タワー」は、イタリアのシエナの光景がイメージされているという。古くから人間は、塔と広場、つまり垂直的な秩序と、水平的なネットワークの二つの人間関係が織りなす社会の中で、生きてきた。

 人間は、組織に属しながら、組織を離れた人的つながりも持っている。しばしばわれわれは、組織の分析だけに多大な関心を払う。しかし、非組織的な人的ネットワークを見なくては、歴史も、現代世界も、理解することはできない。技術革新によって世界の人々のネットワークが新しいスピードと広がりを見せるようになった。今こそ、ネットワークの重要性を再検討しなければならない。

 簡明かつ強力なメッセージだ。著者は、これを裏付けるために、豊かな知識を駆使して、無数の事例を示していく。

 本書の中では、何度も様々な登場人物の人間関係を表したネットワーク図が登場する。数多くの人々が、相互に複雑に結びついている様子を示す図だ。

 上・下巻あわせて60章にわたる本書の構成それ自体も、あたかも一つのネットワーク図のようになっている。18世紀の秘密結社イルミナティから始まり、現代のインターネット社会で終わる本書の叙述は、大きな流れとしては西洋社会の近代史を辿たどっていくものになっている。しかしそれは決して単線的な歴史記述ではない。次々と多種多様な事例が、博学な著者による複雑な背景説明とともに立ち現れ、歴史横断的な相互の結びつきも見せつけていく。

 本書を一つの歴史書として読もうとするならば、あるいは困惑が訪れるかもしれない。しかし、本書が表現するのは、時間と空間をこえて縦横無尽に張り巡らされる人間のネットワークのイメージだ。その複雑な軽やかさこそ、本書の不思議な魅力だ。柴田裕之訳。

無断転載・複製を禁じます
1093737 0 書評 2020/03/08 05:00:00 2020/03/08 05:00:00 ニーアル・ファーガソン「スクエア・アンド・タワー」上下(22日)=杉本昌大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200307-OYT8I50073-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ