毒薬の手帖 デボラ・ブラム著

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 評・宮部みゆき(作家)

 法医学者ノリスと毒物学者ゲトラーのコンビを主役に、アメリカの法医学事始めで二人が解決した数々の事件と、ざっと十一種類もの毒物を次から次へと解説してゆく硬派で物騒なノンフィクションの本書は、しかし無愛想な本ではない。表紙の写真は本人たちのものだが、ヒッチコック映画の一シーンのような趣がある。

 時代は一九一五年から一九三六年まで、舞台は主にニューヨーク。禁酒法の下で文化が爛熟らんじゅくし、「ジャズ・エイジ」の狂騒的できらびやかな風俗がもてはやされたころだ。その時代色がちゃんと描かれているところが、法医学や鑑識捜査を扱った多くの類書とは異なる本書の個性である。

 ページを繰るうちに、まさに同時代を描いた映画『華麗なるギャツビー』の美麗なセットや、高価な衣装や宝飾品や、光り輝く摩天楼で彩られたシーンを思い浮かべた。あの三角関係が、一ちょうの銃ではなく毒物で清算されていたならば、ノリスとゲトラーがギャツビーのお城へ現場検証に来たんだな――などと妄想もひとしきり。五十嵐加奈子訳。(青土社、2600円)

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1093824 0 書評 2020/03/08 05:00:00 2020/03/16 16:44:06 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200316-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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