しゃもぬまの島 上畠菜緒著 集英社 1500円

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夢うつつをさまよう

 評・南沢奈央(女優)

◇うえはた・なお=1993年、岡山県生まれ。2019年、本作で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。
◇うえはた・なお=1993年、岡山県生まれ。2019年、本作で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。

 目覚まし時計が鳴り、止めてもう一度、夢の中に戻る。ふたたび目覚まし時計が、鳴る。止めて夢に入る。そのような夢と現実の行き来を繰り返していると、どちらが夢かうつつか、分からなくなる、なんてことが時々ある。本書を読んでいる時の感覚は、これに近い。

 “起きなければ”という意識がなくなっている。主人公も、そんな状態にあるように思える。主人公・たすくは、アダルト雑誌を作る小さな出版社に勤めている。就職活動をしていた3年ほど前から睡眠障害を抱え、日中は暴力的な眠気に襲われ、だけどいざ横になると眠れない。

 浅い眠りの中で祐は、自分が育った「しゃもぬまの島」の夢を見る。しゃもぬまとは、中型犬くらいの大きさで、ロバに似ていて、そして人を天国に連れて行ってくれるという神獣だ。島にはある慣習がある。島の人間の葬式にしゃもぬまを呼び、反対にお迎えが来たら、天国に行く人を選び、その一人を死なせるのだ。

 ある日、心身疲弊していた祐の元に、「迎えに来ました」としゃもぬまがやって来る。それはつまり、死が迎えに来たことを意味する。だが祐は受け入れ、一緒に生活を始める。やがて、誰がしゃもぬまと天国に行くかを巡って島の人間がざわざわと動き出すうち、島のある家系の秘密が明らかになっていく――。

 最後まで「夢か現か」と彷徨さまよい続ける、神秘的な世界観。どっぷり浸ることができたのは、五感が覚醒するような描写ゆえだろう。しゃもぬまの毛の硬さ、窓から見える空の色、誰かが玄関のドアをノックする音、散歩をしているときの匂い、学校を抜け出して食べた夏みかんの味……。浮遊しているかのような世界観の中で、祐の鋭敏な感覚の表現はエッジが効いている。

 「長い夢をみていたのよ」。目覚めてから気付くかもしれない。誰かがそう声を掛けてくれたのは、夢だったと。あぁ、わたしは「この世ではない」ところを漂い続けている。

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1134540 0 書評 2020/03/29 05:00:00 2020/04/08 10:06:36 書評(21日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200328-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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