「江戸大地震之図」を読む 杉森玲子著 

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 評・木内 昇(作家)

 安政二年十月二日。江戸直下の大地震が発生する。広範囲で町家が倒壊、多数の死者が出た。薩摩島津家相伝の文書には、この地震を記録した「江戸大地震之図」が残る。これと近似した公家・近衛家に伝わる地震図と比較しつつ、史料や古地図と照らして当時の状況をひもといた一書だ。

 地震前の町並み、それが崩れ、火に包まれる様、灰燼かいじんと帰した後……あたかも定点カメラのように町の変化を絵巻は追う。夜半に起きた地震のため、大名屋敷では藩士が高張提灯ちょうちんを手に避難している。焼け跡に銘々の敷地を示す木札が立つ様も描かれる。

 絵巻だけでなく、「江戸名所図会」の著作でも知られる斎藤月岑の日記なども引き、人々の動向も細かに著される。中でも町会所の仕事は秀逸だった。地震発生当日から被災者に握り飯を用意。さらに名主に命じて人別帳を作り、日雇いのため当面の生計が立たぬ者に御救米の段取りを組む。実際の支給は地震発生から約ひと月後。現代よりはるかに迅速ではないか。

 被災状況から江戸再生までの経緯に触れ、歴史から学ぶことの意義を改めて痛感した。 (角川選書、1800円)

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1148231 0 書評 2020/04/05 05:00:00 2020/04/13 09:58:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200413-OYT8I50002-T.jpg?type=thumbnail

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