ジャック・デリダ 死後の生を与える 宮崎裕助著

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岩波書店 3600円
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人生の苦みと味わい

 評・山内志朗 倫理学者・慶応大教授

 フランスの哲学者ジャック・デリダ(1930~2004年)の晩年は陰翳いんえいちていた。若い頃からの華々しい活躍も徐々に憂いに染まっていった。

 若いデリダの「脱構築」という概念は人々を酔わせ、「現代思想」の雰囲気を届けてくれた。西洋の伝統的哲学を「現前の形而上けいじじょう学」と糾弾する姿は誰もが憧れた。

 他にも「差延」という概念がある。外部と内部、肯定と否定、そういった対立の間に成立している差異が消滅せず存在し続ける場合、その存続が「差延」と言われる。外部にあるものは隠されがちだ。差延は外部を保ち続ける。

 その外部にあるものが存続し、その死を生き延び出現すること、それが「亡霊」なのである。

 本書は晩年のデリダを扱う。「亡霊」が本書のキーワードだ。「差延」という概念が「亡霊、死後の生」に結びつくのだ。いずれも生き延びるものだからだ。そしてなによりも、自己の死を生き延びたもの、それは死後に残る生の姿である。デリダ哲学の亡霊性、現代への遺産だ。

 デリダは晩年、死期が近づくにつれて活動の強度が増していった。本書はデリダの最後の時期の苦悩を生々しく描き出す。

 だが、政治的なものの亡霊的起源を見出みいだそうとする彼の眼差まなざしは内部にとどまりはしなかった。

 契約、宣言、約束という一時的な言葉、いや出来事・事件もその効力を後に残し、新しい事実を立ち現させる。言語とは、言語の際そのものにとりいた亡霊なのだ。彼の哲学は最後まで世界に向いていた。

 哲学のテキストは死後の生を本質的に担う活動である。彼の哲学は今も生きている。若い頃の華麗さとは異なる、人生の苦みと味わいをテキストとして残したデリダは本当に哲学者然として深い印象を残す。哲学者かくあるべし。

 現実の生のみがすべてなのではない。亡霊のリアリティを示す本だ。

 ◇みやざき・ゆうすけ=1974年生まれ。東京大大学院総合文化研究科博士課程修了。新潟大人文学部准教授。

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1148295 0 書評 2020/04/05 05:00:00 2020/04/13 09:59:02 書評(21日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200404-OYT8I50035-T.jpg?type=thumbnail

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