憲法講話 24の入門講義 長谷部恭男著

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有斐閣 2500円
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通説と違う良識的解釈

 評・篠田英朗 国際政治学者・東京外国語大教授

 現在の日本の憲法学の第一人者が、「入門講義」として、日本国憲法の全体を見渡す解説書を書いた。文章は平易で、例え話を盛り込む工夫もなされている。内容は、もちろん既存の古い憲法学の焼き直しではない。21世紀の憲法理解のあり方が凝縮されて説明されている。

 著者の語りかけは、「憲法学は、他の法律学よりも人としての良識に頼らなければならない点が多い学問」だというところから始まる。そして古い憲法学通説の陥穽かんせいをつき、より良識的な憲法解釈も提示する。

 たとえば憲法九条は、国際法を意識した文言になっている。既存の憲法学通説は、その点に向き合わない傾向を見せがちであった。

 しかし著者は、憲法九条一項が「国際紛争解決の手段としての戦争を禁止する不戦条約の文言を受けた」ものであることを正面から説明する。19世紀までの「決闘」としての「戦争」は、20世紀に否定された。憲法九条一項が否定するのは、その「決闘」としての「戦争」だ。現代国際法の自衛権の行使ではない。憲法九条が現代国際法に合致していることを認める著者は、自衛権の行使は合憲だという立場である。

 従来の憲法学は、国際法にそった九条一項の内容を、二項の「戦力」と「交戦権」の二つの語句を理由に、読み替えることを通説としてきた。二項を読んでから、あえて一項に戻って内容変更する解釈であった。著者は、これを否定し、一項の延長線上でそのまま二項を読む。

 「戦力(war potential)」の保持を禁ずる二項前段も「『決闘』としての戦争を遂行する能力の保持を禁ずるものと理解するのが素直」であり、「国の交戦権」を否定する二項後段も、「紛争解決の手段として戦争に訴える権利(正当原因)はおよそ存在しない、という趣旨に受け取る方が、筋が通る」と説明する。

 現代の憲法学の最高峰は、既存の憲法学通説とは違っていることがわかる興味深い書である。

 ◇はせべ・やすお=1956年生まれ。東大教授を経て早稲田大教授。著書に『憲法の円環』『憲法の論理』など。

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1148311 0 書評 2020/04/05 05:00:00 2020/04/13 10:01:20 書評(21日、東京都千代田区で)=横山就平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200404-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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