社会のしんがり 駒村康平編著

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 評・稲野和利 ふるさと財団理事長

 高齢化・人口減少、所得格差の拡大は地域の衰退をもたらし、多くの社会問題を発生させる。例えば、貧困や虐待、ホームレス、ひきこもり、障害者雇用の困難などだ。慶応義塾大学での寄付講座をもとに編まれた本書は、制度のはざまや縦割り対応の限界の中で問題と格闘する行政・NPO・企業など11の実例を紹介する。登場人物・組織は退却戦の後衛を指す言葉を用い、敬意を込めて「しんがり」と称される。

 問題は複合化している。例えば、親の不就労や精神疾患が家族の貧困や子どもへの虐待と関係することも多い。2015年創設の「生活困窮者自立支援制度」は問題への包括的支援を可能としたが、本書は、崇高な理念も及ばぬ厳しい現実にも目を向けさせる。と同時に複雑な現実に屈服せず懸命に立ち働く「しんがり」たちの姿は、地域社会の新しい可能性を感じさせる。

 「一番厳しい人を見捨てる社会は、みんなが見捨てられていく可能性のある社会につながっている」(ある「しんがり」の言葉)。人と人の結びつきによる互助の社会システムが待望されている。(新泉社、2800円)

無断転載禁止
1160914 0 書評 2020/04/12 05:00:00 2020/04/21 15:44:23 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200420-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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