未来のルーシー 中沢新一、山極寿一著 青土社 1800円

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自由な思考を楽しむ

 評・仲野 徹(生命科学者 大阪大教授)

◇なかざわ・しんいち=1950年生まれ。人類学者◇やまぎわ・じゅいち=1952年生まれ。霊長類学・人類学者。
◇なかざわ・しんいち=1950年生まれ。人類学者◇やまぎわ・じゅいち=1952年生まれ。霊長類学・人類学者。

 宗教学の中沢新一と霊長類学の山極寿一、同世代の「人類学者」でもある二人。かつて中沢は霊長類学を目指し、山極が現在総長を務める京都大学の理学部を受験したという。いずれ劣らぬ論客が、「『人間を外から思考する』ことを目指す同一の思想体」となって話が弾む。

 タイトルの「ルーシー」は、320万年前に生きていたアファール猿人の化石。発掘された時、ビートルズの「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」が流れていたことから名付けられた。曲名の頭文字がLSD、サイケデリック音楽の代表格だ。本のタイトルからして衒学げんがく的な雰囲気、というのは考えすぎか。

 人類の進化、交換の思想、AI、現代数学、芸術と宗教、そして言語の誕生。もちろん、ゴリラ学に中沢の「レンマ学」も。この二人にとっての「人類学」の守備範囲、あるいは攻撃範囲というべきか、は、とてつもなく広大である。

 「生きられた世界を復元できるか」の章は、京都学派、西田幾多郎の哲学と、今では語られることの少なくなった今西錦司の思想とが根幹をなす。今西は「自然学は科学ではなく、まさに自然の学」と考えていた。この本を読めば、同じように、人類学は人類をまるごと捉える人類の学である、と考えたくなってくる。

 「~ではないでしょうか」とか、「~だと思います」という発言がやたらと多い。繰り広げられる説を正しいものとして鵜呑うのみにするのは、なんだか危なそうだ。それよりも、連鎖反応のように繰り広げられていくリーチの長い自由な思考を純粋に楽しむべき本ではないかと思う。

 中沢さん、難しすぎて何言うたはるのかわからへん。山極さん、さすがにそれは考えすぎとちゃいますか。などと独りごちながら、好き勝手に自分の頭をやわらげながら拡大していくのが正しい読み方のような気がする。もちろんわたしはそうやって読み進めて、むっちゃ楽しかったのであります。みなさんもぜひどうぞ!

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1174201 0 書評 2020/04/19 05:00:00 2020/04/27 10:16:54 書評 未来のルーシー https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200418-OYT8I50026-T.jpg?type=thumbnail

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