南方熊楠のロンドン 志村真幸著

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評・三中信宏(進化生物学者)

 現代の科学者にとってネイチャー誌に論文が掲載されることは栄光の証である。だから、南方熊楠がロンドンに遊学していた19世紀末から帰国後の20世紀初頭にかけて、そのネイチャー誌に単著で実に50編もの民俗学の論考を掲載し、現在に至るまでその最多掲載記録は破られていないと聞けば、誰しも彼をつい“神格化”してしまうのも無理はないだろう。しかし、当時のネイチャー誌は、現在とはまったく異なる総合誌だった。

 本書は滞英中の熊楠が主たる投稿先としたネイチャー誌ならびにノーツ・アンド・クエリーズ誌の創刊以来の変遷を綿密にたどる。職業科学者のための議論と一般読者向けの啓蒙けいもうのはざまで、ジャーナルというメディアに期待される役割は大きく揺れ動いた。ネイチャー誌が一般啓蒙誌から専門学術誌へとあらがいがたい変身を遂げるにつれて熊楠が活躍できる場はしだいになくなり、それに代わるノーツ・アンド・クエリーズ誌上に彼は300編あまりのやりとりを投稿した。著者は熊楠を「SNSに親和性の高い人間」と推察する。評者もそう感じた。(慶応義塾大学出版会、4000円)

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1210650 0 書評 2020/05/10 05:00:00 2020/05/21 09:39:01 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200518-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail

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