安藤忠雄 建築を生きる 三宅理一著

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闘う「建築僧」の実像

評・橋本五郎(本社特別編集委員)

みすず書房 3000円
みすず書房 3000円

 安藤忠雄は6年前、膵臓すいぞう脾臓ひぞうの全摘手術を受けた。これで内臓を五つ失ったが、世界中から寄せられた見舞いにこう返信した。「安藤忠雄は不死身です」。本書はその不死身さのゆえんを、人物と作品を哲学的、思想的に深く掘り下げることによって明らかにする。

 安藤建築の特徴とは何か。「コンクリートの箱の建築家」という一般的イメージとは裏腹に安藤の思考は緑とともにあり、光や水など生命力をもった自然そのものに強く注がれている。それは住宅でも「光の教会」など教会建築でも町づくりでも震災復興でも一貫している。正方形や円といった図形を多用した「幾何学性」も大きな特徴といわれている。ただ、それも土地や風土との間の微妙なバランスの上にある。

 瀬戸内海に浮かぶ直島の地中美術館に見られる「地下への願望」など、特徴を挙げようとすれば限りないが、もっとも大きいのは安藤にとっての建築とは生き方そのものであるということだろう。東大大学院での講義録『連戦連敗』(東京大学出版会)で明快に述べている。

 「建築は闘いです。そこでは緊張感が持続できるか否かに全てがかかっている」

 その死に物狂いの格闘の最初の証しが日本建築学会作品賞に輝いた「住吉の長屋」である。安藤の禁欲的な生き方、作風はフランスの建築批評家の目には修道僧にも似た「建築僧」に見え、安藤を東大に招いた鈴木博之には奈良時代の勧進僧行基と二重写しになった。安藤建築の哲学性は西田幾多郎記念哲学館にも表れている。西田という不世出の哲学者の著作から内面での彷徨ほうこうと葛藤を読み取って追体験し、虚飾を剥ぎ取って「くうの庭」としてしつらえた。

 生粋の大阪人である祖母キクエや妻由美子の母フミ、人生の師佐治敬三らの存在が、安藤の人間形成にとっていかに大きかったかなども丁寧に描いている。本書は、その広さと深さにおいて最近まれにみる評伝と言うべきだろう。

 ◇みやけ・りいち=1948年生まれ。建築史家。著書に『パリのグランド・デザイン』『秋葉原は今』など。

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1237285 0 書評 2020/05/24 05:00:00 2020/06/01 13:35:36 三宅理一安藤忠雄 建築を生きる(18日、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200523-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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