怪談に学ぶ脳神経内科 駒ヶ嶺朋子著 

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医師がオカルトを分析

評・宮部みゆき(作家)

中外医学社 3200円
中外医学社 3200円

 超能力、幽霊、霊視、UFO、UMAなど、いわゆる「オカルト」に分類される事象は、どうして多くの人びとの興味を集めるのだろうか。

 〈1〉なぜそのようなものが生まれたのかという社会学的、民俗学的、歴史的側面が面白い。

 〈2〉その現象や人が、われわれの理解できる科学現象なのか、それとも人智じんちを超えたまだ理解できない現象なのか、はたまた単なるインチキかという科学的側面も面白い。

 恐怖体験や不思議体験の有無、宗教的信念の濃度、科学に対する心理的な距離、単純に「どの程度怖がりか」等々のパーソナルな差違はあれど、私たち現代人の多くは、この〈1〉と〈2〉のバランスを取りつつ「オカルト」というものと向き合っているのではないか。私個人は、オカルトの謎解きを楽しみたい時は〈2〉が前面に、仕事で怪談を書いているときは〈1〉が前面に出ているような気がする。

 本書は、脳神経内科の専門医である著者の分析眼が〈2〉のスタンスであり、著者が分析の題材に選んだ怪異が〈1〉をカバーしている。ページを繰れば横書きの論文スタイルで、タイトルからして医学的な内容間違いなしの本なのに、『日本霊異記』や『死霊解脱物語聞書』、幽霊図やろくろ首の図まで出てくる。造本はポップだが、甘く見てはいけない。本書のもとになっているのは医学論文だ。「民俗学史料への病跡学的分析の試み」なのである。だから面白い。

 幽霊の姿を見ることや、怨霊にかれること、ドッペルゲンガー、かなしばり、幽体離脱などの現象を、医学的な診断によって説明することはできないか。全十章、専門用語はやや多めだけれど、文芸にも明るい著者の語り口は楽しい。『雨月物語』のなかでも有名なエピソード「青頭巾」の解析、ろくろ首と片頭痛の関係、「うらめしや」の幽霊の両手を下げたポーズは末梢まっしょう神経障害――と、読後は誰かに吹聴したくなること請け合いの新鮮な知見がいっぱいだ。

◇こまがみね・ともこ=1977年生まれ。脳神経内科・総合内科専門医。詩人。詩集に『系統樹に灯(とも)る』。

無断転載禁止
1250811 0 書評 2020/05/31 05:00:00 2020/06/09 10:31:14 駒ヶ嶺朋子怪談に学ぶ脳神経内科(18日、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/05/20200530-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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