現代経済学の直観的方法 長沼伸一郎著 講談社 2400円

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◇ながぬま・しんいちろう=1961年生まれ。物理学者。87年に『物理数学の直観的方法』で注目を集めた。
◇ながぬま・しんいちろう=1961年生まれ。物理学者。87年に『物理数学の直観的方法』で注目を集めた。

文理融合のもくろみ

 評・仲野 徹 生命科学者・大阪大教授

 あたらしいことを学ぶのは楽しい。しかし、難しくもある。医学部で病理学を教えていて、つくづくそう思う。多くの学生が病理学は難しいと言う。しかし、こちらから言わせると、実際には何も難しいことなど教えてはいない。

 ただ、難しく感じるのはわかる。知らない言葉や概念が次々と出てくるせいだ。全体を俯瞰ふかんすれば、あれとこれはこうつながる、同じような考え方が何度も繰り返される、と容易に理解できる。しかし、そこまで達するのが大変だ。

 この本、タイトルのとおり、現代経済学のさまざまな事柄を直観的に理解させてくれる。だから、そのような学びにくさをまったく感じさせない。まるで魔法のような素晴らしさだ。

 資本主義とは何か、農業経済の敗退、インフレとデフレ、貿易の拡大、ケインズ経済学、貨幣の増殖、国際貨幣としてのドル、と、おおよそ時代に沿ってテーマが取り上げられていく。

 あまりにシンプルな図とわかりやすすぎる解説のために、もしかすると何かだまされているのではないかといぶかってしまったほどである。そして圧巻は、段階的に知識を得た上で展開される最後の2章、「仮想通貨とブロックチェーン」と「資本主義の将来はどこへ向かうのか」だ。

 ブロックチェーンについては、これまで何冊か読んだことがあるのだが、どうにも腹落ちしなかった。ところが、簡単な数学、いや、算数を用いたハッシュ関数の説明が頭に入ると、不思議なほどさくさく理解できた。なるほど、大規模なブロックチェーンの実現は難しそうだ。

 最終章では「縮退」という概念に基づき、現在の資本主義の本質的問題は何か、そして、どのような対処法が可能かが考察されていく。

 かつて『物理数学の直観的方法』でセンセーションを巻き起こした長沼伸一郎氏、執筆は足掛け20年にも及んだという。文理の融合を目指して9冊分の内容を1冊に押し込んだその目論見もくろみは十二分に達せられている。脱帽!

無断転載禁止
1263331 0 書評 2020/06/07 05:00:00 2020/06/15 16:14:40 書評 「現代経済学の直感的方法」 長沼伸一郎(1日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200606-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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