生命の〈系統樹〉はからみあう デイヴィッド・クォメン著 作品社 3600円

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

◇David Quammen=米国の作家、ジャーナリスト。多数の小説のほか、科学や自然史に関する著作がある。
◇David Quammen=米国の作家、ジャーナリスト。多数の小説のほか、科学や自然史に関する著作がある。

進化はネットワークだ

 評・三中信宏(進化生物学者)

 生物進化を枝分かれする“系統樹ツリー”とみなす先入観は無数の生きものの多様性を階層的に理解するためのグラフィック・ツールとしては役立つ。しかし、分岐的な系統樹が現実の進化パターンをうまく表現できるとは必ずしもかぎらない。450ページにも及ぶ本書は、分岐するツリーに代わる新たな系統発生モデルとして、網状にからみあった“系統ネットワーク”が登場する舞台裏を究明した科学史の労作だ。

 しかし、本書に描かれる“からみあい”の様相は一筋縄ではいかない。太古の昔、細胞内に別の細胞が入りこんだとする「細胞内共生説」によれば異なる生物系統は複雑にからみあう。この説はリン・マーギュリスという稀代きだいの語り部を得て現代に華々しく復活した。

 第二に、1970年代の分子系統学の黎明れいめい期、リボソームRNA(核酸)の情報をもとに、真核生物と細菌に並ぶ第三の生命形態ドメインである「古細菌アーキア」を発見したカール・ウーズが舞台に登場し、同僚フォード・ドゥーリトルをも巻き込んで全生物の起源をめぐる大きな論争につながった。際立つ個性をもつ彼ら研究者群像の織りなす人間関係のからみあいも本書のもうひとつの読みどころだ。

 さらに、生物のゲノム自体もまたからみあう。ゲノムを構成する遺伝子群の広範囲な「遺伝子編集」と「水平伝播でんぱ」の結果、たとえばヒトのゲノムにはヒト以外の生物の遺伝子が数多く組み込まれているからだ。生物間の遺伝子の相互乗り入れは“種”の壁を生物学的にも概念的にも突き崩している。

 近年の膨大な遺伝子情報を踏まえた系統ゲノム学のめざましい進展がもたらす複雑な系統ネットワークはおそらく人間の直感的な読解能力をはるかに上回っているだろう。われわれはこのからみあう現実をどのように理解すればいいのだろうか。訳文はとても読みやすい。事項索引があればもっとよかったのに。的場知之訳。

無断転載禁止
1263334 0 書評 2020/06/07 05:00:00 2020/06/15 16:14:47 書評 「生命の〈系統樹〉はからみあう」 デイヴィッド・クォメン(1日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200606-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

東京都知事選2020特集ページ
一緒に読もう新聞コンクール

新着クーポン

NEW
参考画像
800円650円
NEW
参考画像
ご宿泊のお客様にコーヒー1杯サービス
NEW
参考画像
2000円1800円
NEW
参考画像
1100円550円
NEW
参考画像
790円720円

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
挑むKANSAI
読売新聞社からのお知らせ