マックス・ウェーバー 野口雅弘著 中公新書 860円/マックス・ヴェーバー 今野元著 岩波新書 860円

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◇のぐち・まさひろ=成蹊大教授。政治学◇こんの・はじめ=愛知県立大教授。欧州国際政治史。
◇のぐち・まさひろ=成蹊大教授。政治学◇こんの・はじめ=愛知県立大教授。欧州国際政治史。

タフさと柔らかさと

 評・苅部 直(政治学者・東京大教授

 二十世紀初頭のドイツで活躍し、社会学、政治学、宗教学など多くの分野で古典となる著作をのこした思想家、マックス・ウ(ヴ)ェーバー。本日はその亡くなった日で、没後百周年にあたる。この機会にあわせて、政治学者による評伝の新書が二冊、ほぼ同時に刊行された。

 同じ人物の生涯を語りながら、二人の著者が用いる方法は対照的である。今野元は、現地でみずから発見した文書も含め、多くの資料を引用しながら、ウェーバーと周辺人物との関係を綿密に描きあげる。野口雅弘は、ハンナ・アーレントや丸山眞男など、のちの思想家たちがウェーバーの作品をどう読んだかにも焦点をあて、その思想の意義を再考察する。

 主題としては両書とも、「闘争」を基調にしたウェーバーの人間観・政治観を強調する。また、政治と倫理の関係や、近代の合理主義をめぐっては、その内部にある矛盾に誠実にむきあって分析概念を編みだした営みを、高く評価している。だが、描かれるウェーバーの姿の違いは大きい。今野本で活躍するウェーバーは、頑強なドイツ・ナショナリスト。これに対して野口本では、諸宗教の比較分析を通じて、人が生きる「意味」を問い続けた求道者に見える。

 タフなウェーバーと柔らかいウェーバー。第一次世界大戦にさいしての態度について、今野はドイツ人の運命を担おうとするウェーバーの真剣さを読みとり、野口は戦死の美化・神聖化に対して距離をとる姿勢に注目する。戦後の日本で長らく共有されてきた、偉大な思想家としての偶像に対する破壊の威力は、今野の方が激しいが、野口もまた、ウェーバーの自明の前提であった西洋中心主義が、現代では通用しにくくなったことへの戸惑いを隠さない。

 どちらの本を読むかによって、読者の抱くイメージは変わるだろう。だがその変化の幅ひろさにこそ、思想史の叙述の醍醐だいご味がある。

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1276087 0 書評 2020/06/14 05:00:00 2020/06/22 10:56:34 書評 「マックス・ウェーバー」 野口雅弘(左)、「マックス・ヴェーバー」 今野元(1日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200613-OYT8I50038-T.jpg?type=thumbnail

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