怪異の表象空間 一柳廣孝著

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評・三中信宏(進化生物学者)

 “怪異”ということばは私たちの心をざわりと逆なでする。そんなのは非科学的な迷信と言い捨てたい読者はぜひ本書を手に取ろう。文明開化したはずの明治時代になっても奇談怪談は大流行し、さまざまな心霊術・催眠術・霊術がときには科学の看板を掲げて民衆を取り込もうとした。

 社会現象としての“怪異”は今なおとぎれない。第二次世界大戦後のオカルト・超能力ブームは、つのだじろうの怪奇漫画『うしろの百太郎』や『恐怖新聞』の人気を支え、続く「学校の怪談」や都市伝説の流行を経て、現代のライトノベルや宮崎駿の映画<もののけ姫>にも連なっている。かつて松谷みよ子が精力的に収集編纂へんさんした『現代民話考』には、古典的な狐狸妖異譚こりよういたんはもちろん、「タクシーに乗る幽霊」伝説や大事故・大震災にからむ怪談など同時代の都市伝説にいたるまで多様な語り伝えが集積されていた。

 これらの民間伝承や社会流行の背景を掘り下げた本書は、私たち自身の心に“怪異”がみ着いていることを示唆する。明治の妖怪博士・井上圓了が見抜いた通り、人間の心こそ“真怪”である。(国書刊行会、3600円)

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1290267 0 書評 2020/06/21 05:00:00 2020/06/29 14:36:40 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200629-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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