アフリカの森の女たち ボニー・ヒューレット著

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連帯と回復、歓喜の物語

評・尾崎真理子(早稲田大教授・本社調査研究本部客員研究員)

春風社 3100円
春風社 3100円

 原題は「さあ聞いて、お話があるんだ」。語るのは中央アフリカ共和国、コンゴ盆地に暮らす4人の女性。

 ナリとコンガは森の狩猟採集民「アカ」。テレーズとブロンディーヌは村に定住する焼畑農耕民「ンガンドゥ」で、少し西欧化されている。両者は長く共存してきた。

 幼年、思春期、結婚、子育て、長い老年期。起伏と示唆に富んだ彼女たちの“私語り”を、飽かず読んだ。15年以上も繰り返し、熱帯雨林の木陰や小屋で膝突き合わせた、このアメリカ人研究者に心を開き、4人は記憶と感情の限りを語っている。

 著者は典型や類似を性急に探さず、一人ひとりの声に耳を澄ます。その姿勢を、現代アフリカを代表する女性作家アディーチェに学んだという。いわく<多くのストーリーが重要だ><ストーリーは壊された尊厳を取り戻すこともできる>。

 女の子は4、5歳から家事を担い、胸も膨らまぬうちの早婚も、一夫多妻制もいまだにある。切り傷さえ致命傷につながりかねず、実際、半数近くが15歳まで生きられない。子どもを、親を失う悲嘆にいつ襲われるか、身構える日常……。それでも本書はアフリカ、女性、ならば悲惨、と続く文脈に回収されない。

 「アカ」の男女は協働で森での暮らしを維持し、父親が熱心に子育てを行う。一方の「ンガンドゥ」の家族の営みは、日本古来のそれと地続きのよう。<私は生命の根>と語る踊りの好きなテレーズは、動植物から歴史の教訓に至る<知識の図書館>だと、孫の青年から敬愛され、老年期の居場所を得ている。

 著者が発掘し、初めて世界に知らせることになったアフリカの深奥に暮らす女たちの主観的な思考――それは先進文明国の精神を揺さぶるほど確かな、無数の連帯と回復、そして歓喜の物語でもある。

 隣国カメルーンなどで研究に携わりつつ、本書の訳出と編集に尽力した服部志帆、大石高典、戸田美佳子各氏の健闘もたたえたい。

 ◇Bonnie Hewlett=米ワシントン州立大学・臨床助教授。専門は医療人類学、発達心理学。

無断転載禁止
1290285 0 書評 2020/06/21 05:00:00 2020/06/29 14:37:45 アフリカの森の女たち=飯島啓太撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200620-OYT8I50081-T.jpg?type=thumbnail

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