交響曲第6番「炭素物語」 ロバート・M・ヘイゼン著

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土、空気、火、水……

評・仲野 徹(生命科学者、大阪大教授)

化学同人 2400円
化学同人 2400円

 内容を知らなくとも、タイトルだけで食指が動いてしまう本がある。『交響曲第6番「炭素物語」』。どうです、そんなことありませんか?

 生体を構成するほとんどすべての分子に含まれているので、炭素は我々生命科学者にとって重要かつなじみの深い元素である。「水兵リーベ僕の船……」。第6番の意味は周期表の語呂合わせを思い出せばすぐにわかる。炭素の原子番号だ。しかし、どうして交響曲なのだろう。

 その四つの「楽章」のタイトルは、アリストテレスが地上の物質を構成する元素とした「土」「空気」「火」「水」だ。大仰な、と思いながら読み始めたのだが、炭素はそう扱いたくなるような元素であることが次第にわかっていく。

 ビッグバンにおける炭素原子の誕生、地球での炭素循環、暮らしに利用される炭素素材、そして、生命活動で機能する炭素、が、それぞれのテーマである。自在に時空を駆け巡るかのような躍動感にあふれる華麗な旋律は、炭素を主題にした壮大な交響曲と呼ぶにふさわしい。

 第4楽章「水」で描かれる、生命における炭素についての知識はあった。しかし、宇宙創世の時にはわずかしかなかった炭素が核融合で増加していったとか、巨大ダイヤモンドは地表から数百キロもの深部で作られて地上に移動してきたとか、知らないことばかりだった。

 本文にQRコードがたくさん貼り込んであって、スマホ片手に検索すると、膨大な資料を参照できる。タイトルや構成、内容だけでなく、こういった新しいスタイルもおもしろい。

 50か国、のべ千人以上の研究者による、物理、化学、地質学、生物学を統合した10年間で総額500億円のビッグプロジェクト「深部炭素観測」。リーダーだった地質学者ヘイゼンがその成果をわかりやすくユニークな体裁にまとめたのがこの本だ。なんと、ヘイゼンはプロのトランペッターでもある。いやはや、世の中には多彩な能力に恵まれた人がいるものです。渡辺正訳。

◇Robert M.Hazen=1948年生まれ。米国カーネギー研究所地球物理学研究所の深部炭素観測の責任者。

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1320049 0 書評 2020/07/05 05:00:00 2020/07/13 14:22:15 ロバート・M・ヘイゼン「交響曲第6番「炭素物語」」(29日午後1時45分、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200704-OYT8I50047-T.jpg?type=thumbnail

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