相対化する知性 西山圭太、松尾豊、小林慶一郎著

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人間と人工知能の共存

評・瀧澤弘和(経済学者、中央大教授)

日本評論社 2700円
日本評論社 2700円

 第3次人工知能ブームを牽引けんいんする深層学習の技術。そのメカニズムへの洞察を起点として、今日、世界観・知識観そのものが革新されつつあることを説く。

 深い階層をもったニューラルネットワーク(神経回路網)に大量のデータを与えて学習させる深層学習のすごさは、「特徴量」(データの中の隠されたパターン)を与えなくても自ら学習してしまうところにある。そのメカニズムは、ハイエクが『感覚秩序』において記述した、人の脳内の情報処理の仕方とほぼ同じである。深層学習は実質的に、人間が複雑な世界からパターンを抽出して行う「概念形成」と同じことを行って成功しているのだ。

 このような知識生産を可能にしているのは、ビッグバンに始まった宇宙が現在、多様なパターンに満ちた情報量豊かな段階にあり、さまざまなシステムがその構成要素の状態からは推し量れない性質を創発させる階層的構造をしているからだと著者たちは喝破する。この意味で、人間の脳を含むニューラルネットワークも、宇宙の物理的秩序も同型であることが、このような知識生産を可能にする背景をなしている。

 こうして、世界の「ある」と「知る」とを一体的に把握する像が得られる。人間が世界の内部で世界を認識していることは素朴な事実だ。だが従来の多くの知識観では、人間が世界の「外側」の視点から世界を知るという構図で考えがちだ。また、科学を生み出してきた人間の知的能力を特権化する傾向を伴っていた。しかし本書の観点からは、人間知性の成立は世界の構造を反映したものとして、生命体一般の知性と連続的に捉えることができる。

 最終部では、こうした同型論を、イノベーションを内包した市場社会へと適用して、人間と人工知能が共存する社会の意味が探求される。

 独創的な着眼点と構想力の大きさで多くの刺激を与えてくれる快著である。

 ◇にしやま・けいた=1963年生まれ。経済産業省経済産業研究所のコンサルティングフェローなどを務める。

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1320053 0 書評 2020/07/05 05:00:00 2020/07/13 14:22:12 西山圭太、松尾豊、小林慶一郎「相対化する知性」(29日午後1時35分、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200704-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

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