性転師 伊藤元輝著 柏書房 1600円

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◇いとう・げんき=1989年生まれ。証券会社を経て共同通信社記者。現在は神戸支局に在籍。
◇いとう・げんき=1989年生まれ。証券会社を経て共同通信社記者。現在は神戸支局に在籍。

性別適合手術の実態

 評・鈴木洋仁 社会学者・東洋大研究助手

 「本当の自分を取り戻しませんか?」

 帯の言葉は好奇心をあおる。ネタになる、と飛びついた著者と同じく、キワモノについての本と読みたくなる。まったく違う。真剣だ。

 タイで性別適合(性転換)手術を受ける日本人を募り、病院や航空券の手配などの仲介業に携わる人(師)を著者は「性転師」と呼ぶ。

 その一人、表紙に映る丸刈りにひげ面の人・坂田洋介は約20年前に始めた先駆者だ。彼への密着に始まって、「性転師」たちの営む七つの会社、彼らの生まれる背景、そして、なぜタイなのか。通信社の若手記者は丁寧かつ軽やかに描く。取材でのやりとりや思いが細かく記されるので、著者の心の動きまで追体験できる。

 坂田との偶然の出会いから彼らを追うのは、「性同一性障害」を「真面目に」取りあげて、「本当のこと」を伝えるためだ。性器をはじめ体の性と、自分のとらえる性とが合わないと、今は「障害」として扱われる。不一致は、時に混乱や絶望を伴う。決して興味本位に扱えない。「性転師」を始めたきっかけを人助けとお金の両方だと坂田は言う。自分たちの仕事が、客に、数百万円の費用に加えて、痛みや失敗の恐れを強いる理不尽な面を持つからだろう。

 「決して手術を推奨しているわけではございません」とウェブサイトに書く会社すらある。そのわけを、ぜひ本書で直接確かめてほしい。性の変更をめぐる根源的な問いがそこにある。

 日本では16年前から戸籍上の性を変えられる。既に8000人以上が変えたのに手術技能は低い。2年前、保険適用が認められ、タイより国内を選ぶ人は増えるはずなのに広がらない。

 技術や制度より、考え方の転換が求められる。

 「性同一性障害」は2年後、「性別不合」へ国際的な呼び方が変わると既に決まっている。「性転師」を「金もうけ」と非難するのではなく、彼らの存在が照らす、私たちの性や固定観念を根こそぎ変える。そのために本書を読もう。

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1336257 0 書評 2020/07/12 05:00:00 2020/07/12 05:00:00 伊藤元輝「性転師」(29日午後1時48分、本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200711-OYT8I50051-T.jpg?type=thumbnail

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