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〈うた〉起源考 藤井貞和著

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日本語の深層に生きる

評・苅部 直(政治学者・東京大教授)

青土社 4200円
青土社 4200円

 表題にある<うた>は、歌でも詩でもない。日本の場合、古代歌謡が口唱の旋律から離れ、個人による詩作に変わることで、『万葉集』以降の和歌が生まれた。しかしその伝統が確立する『古今集』の時代に至っても、歌人たちの世界の近辺には、歌舞によって生きる芸能者がいた。歌われるものと歌われないもの、両者を総合した<うた>は、どの文化においても言語の使用とともに生まれ、いまに至るまで存続している。

 こうした洞察に基づき、『古事記』『日本書紀』に記録された古代歌謡から、『万葉集』、平安和歌、『源氏物語』、さらに現代短歌までを論じきった大著である。国文学者、藤井貞和の仕事に関する、一つの集大成と言えるだろう。

 三十一の短い字数のうちで、言葉と言葉をつなぐ助詞・助動詞の用法や、「懸けことば」などの技法が、歌を詠む主体の思いを浮かびあがらせる。問答体の歌のやりとりに起源をもつ、読者に対して問いかけるような調子。そうした特色が現代短歌にも流れこんでいる。

 同時に、日本の<うた>が沖縄など南島の古い歌謡と共通の特色を示し、さらには中国の漢詩、南インドの詩といった、外からの影響もうかがわせると藤井は指摘する。そうした多様な声が交錯する世界から、和歌は生まれてきたのである。その議論を敷衍ふえんするならば、「伝統」や「古典」といった名称が想像させる固定した美感を、解体する運動もまた、おそらくそこには働いていた。

 藤井はみずから詩人として、現代短歌と現代詩、双方の動向が交錯した一九七〇年代前後に比べると、現在はその間の壁が厚くなってしまったが、両者の「協働が依然として喫緊ではないか」と述べる。ささやかでありながら強い希望を支えているのは、日本語による言語活動の深層で生き続ける、<うた>の豊麗な響きに対する確信なのだろう。

◇ふじい・さだかず=1942年生まれ。詩人、国文学者。東京大名誉教授。『源氏物語論』で角川源義賞受賞。

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1413085 0 書評 2020/08/16 05:00:00 2020/08/24 11:50:31 藤井貞和「〈うた〉起源考」(6日)=杉本昌大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200815-OYT8I50059-T.jpg?type=thumbnail

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