専門知を再考する H・コリンズ、R・エヴァンズ著

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新たな科学像の構築へ

評・三中信宏(進化生物学者)

名古屋大学出版会 4500円
名古屋大学出版会 4500円

 原発事故やコロナ禍など大きな社会問題が浮上するたびに、科学的な専門知識が必要だと繰り返し公言されてきた。その一方で、専門家の見解が不当に軽視されたり政治的な曲解誤用の憂き目に遭うことは少なくない。専門的な知識はえてしてつまみ食いされ、つねにそれにふさわしい価値を認められ、尊重されるわけでは必ずしもない。専門知をないがしろにするしきポピュリズムの伝統はいまだに根強く残っている。

 そもそもここでいう「専門知」とはいったい誰のものだろうか。科学者の特権か、一般人にも手が届くのか。どうすればその「専門知」は身に付くのか。本書は科学における専門知の特徴とその実在性を明快に整理した上で、この専門知がどのように形作られて広まるかを理論と実験の両面から解明しようとする。

 本書が提唱する専門知を分類する「周期表」は興味深い。とりわけ、ある分野を実質的に担う「貢献型専門知」を会得した“その道の専門家”との密接なやりとりを通して得られる「対話型専門知」という新たなカテゴリーが論議の核となっている。この対話型専門知をよりどころとして新たな科学論への道筋が示される。たしかに対話型専門知があれば複数の専門分野をまたいだ生産的なつながりが期待できるだろう。しかし、この専門知は誰にでも容易に手に入れられるわけではない。明示的な部分(オモテ)と暗黙知の部分(ウラ)から構成される専門知のなりたちは、“科学”に対して万人には必ずしもたどりつけない特別な地位をふたたび与えることになる。

 本書はかなり歯ごたえがある専門書で、読めばすぐわかるタイプの本ではけっしてない。幸いなことに、著者コリンズは一般読者向けに『我々みんなが科学の専門家なのか?』(法政大学出版局)を出している。この2冊を合わせ読めば、新たな科学像を構築しようとする著者の主張をよりよく理解できるだろう。奥田太郎監訳、和田慈・清水右郷訳。

 ◇Harry Collins、Robert Evans=英カーディフ大教授。科学技術社会論。

 ※原題は Rethinking Expertise

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1441547 0 書評 2020/08/30 05:00:00 2020/09/07 11:47:45 書評(8月30日付用) 専門知を再考する  H・コリンズ、R・エヴァンズ(24日午後3時2分、東京都千代田区で)=早坂洋祐撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200829-OYT8I50059-T.jpg?type=thumbnail

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