キネマの玉手箱 大林宣彦著

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評・鈴木洋仁(社会学者・東洋大研究助手)

 〈とんでもないことになっている!〉と叫ぶしかない。

 映画作家・大林宣彦の遺作『海辺の映画館―キネマの玉手箱』は常識をぶち壊す。

 今すぐ映画館に駆けつけて頂きたい! が、その前に、肺がんで余命半年を宣告されても4年近く生きた今年4月、82年の生涯を閉じた彼の遺書での予習をお勧めする。

 〈戦争は嫌だという実感だけは伝えよう〉とするフィロソフィーを持つ元軍国少年として、〈映画で歴史は変えられんけど、歴史の未来は変えられるんかもね〉と書く未来人として、彼は虚実の皮膜をあやつる映像の魔術師であり続けた。最後に自分という患者のプロになり病をも豊かな体験に変える姿に感服する。

 家の蔵で映写機と出合った少年が自主映画で名をあげ、CMの大成功による報酬をもとに先入観を外す自由な作品を次々と世に問う。そんな彼が秘密にしてきた大切なもの=玉手箱にある小津安二郎や大島渚、是枝裕和といった監督や西部劇への思いを語る。大林版映画史の熱がほとばしる。

 丁寧につくられた本書に登場する作品を見るたび、作家は何度でも生き返るだろう。(ユニコ舎、1500円)

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1473697 0 書評 2020/09/13 05:00:00 2020/09/23 10:28:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200916-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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