武漢日記 方方著 飯塚容、渡辺新一訳 河出書房新社 1600円/物的中国論 羽根次郎著 青土社 2600円

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一市民が見た都市封鎖

評・加藤聖文(歴史学者・国文学研究資料館准教授)

◇ふぁんふぁん=1955年生まれ。現代中国を代表する女性作家◇はね・じろう=74年生まれ。明治大准教授。
◇ふぁんふぁん=1955年生まれ。現代中国を代表する女性作家◇はね・じろう=74年生まれ。明治大准教授。

 『武漢日記』は、コロナ感染爆発による都市封鎖という異常事態のなか、人びとの悲しみや怒り、そして助け合いの日々を一市民の目線から記録したものだ。亡くなった人びとを社会が永遠に忘れないよう、65歳の方方が検閲に負けず毎日の出来事をネットで発信しつづける姿は、激しさとともに清々すがすがしい。

 日記のなかの人びとは、日本よりもはるかに悲惨な状況に置かれているのに、日本よりも悲壮感が漂っていない。感情を爆発させながら常に前向きだ。その一因は、中国のITがコロナ禍の相互扶助ツールとなって誰も孤独では無いから。この点は日本人も大いに見習うべきだ。

 文革世代の方方は、行政への批判や責任者追及の手を緩めず、当局によるアカウント削除やネットでの「極左」の攻撃にも屈しない。しかし、勘違いしてはならないのは、共産党政権批判ではないこと。方方の怒りは彼女なりの愛国心の発露なのだ。

 この本を読み進めるうち、なぜ中国でネット社会が急速に発展したのか、欧米的価値基準で計り知れない中国的な国家と個人の関係など、わからないことが次々とわき上がる。中国って何だ? そんな時に『物的中国論』がお薦め。

 歴史から現代政治、そして言語とさまざまな角度から中国を論じた本書は、日本で流布している中国観がいかに偏ったものであるかを教えてくれる。感染症についても、歴史的に伝染病に悩まされ続けてきた中国では予防意識が高いとのこと。今回もその意識が発揮され、中国得意の「人民戦争」でコロナ禍を乗り切ったといえる。『武漢日記』も、伝統的な対処方法が現代のSNSと結びついて効果を発揮していく過程として読むと別の発見があるだろう。

 「武漢ウイルス」と軽侮するのではなく、この危機を中国はどう乗り切ったのか、その原動力は何か、私たちは今こそ「中国」そして「中国人」を知らなければならない。

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1489809 0 書評 2020/09/20 05:00:00 2020/09/28 10:42:31 武漢日記 方方、物的中国論 羽根次郎(12日、東京本社で)=沼田光太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200919-OYT8I50046-T.jpg?type=thumbnail

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