わさびの日本史 山根京子著

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評・三中信宏(進化生物学者)

 世の中には唐辛子を論じた本はたくさんあるのに、同じく“辛さ”を身上とするわさびの本がほとんどないのは不公平きわまりない。

 わさび色のカバーにくるまれた本書は、この食用植物の進化の分子系統学的な解明を目指す。謎が謎を呼ぶ絶妙なストーリー展開に引き込まれながら、わさびの食文化を探るべく古文書群(献立表や茶会記など)を徹底的に渉猟する著者の研究者らしい“しつこさ”に共感を覚える。

 DNA塩基配列データによれば、わさび祖先集団が中国大陸から日本に入ってきたのは百万年前のことだという。江戸時代はじめには静岡の安倍川上流の有東木うとうぎで栽培されていたが、その後、伊豆半島の天城山麓などでも大規模に栽培されるようになった。

 わさびをめぐる生物学と文化史との絶妙な絡み合いはとてもおいしい。本書は、長い年月をかけて人知れず育種され、いつしか日本料理の膳の片隅に必ず乗るようになったわさびの民俗植物学と食文化史学の基礎資料として価値があるだろう。とりわけ詳細な巻末のわさび年表には圧倒される。わさびよ永遠なれ。(文一総合出版、2500円)

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1520006 0 書評 2020/10/04 05:00:00 2020/10/13 09:28:40 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201007-OYT8I50029-T.jpg?type=thumbnail

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