読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

剱岳―線の記 高橋大輔著

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

朝日新聞出版 1700円
朝日新聞出版 1700円

初登頂の謎解き明かす

評・木内 昇(作家)

 立山連峰にそびえる剱岳。明治40年、「地獄の針の山」と異名を持つこの山に、日本陸軍の柴崎芳太郎率いる測量隊が初登頂した……はずだった。が、山頂にたどり着いた一隊は、そこに収められた錫杖頭しゃくじょうとうと鉄剣を発見する。いずれも古代の仏具である。つまり柴崎隊よりはるか昔に、剱岳登頂を成功させた人物がいたのだ。

 いつ、誰が、どのように、どのルートを経て山頂に至ったのか。どこに仏具を収め、なぜ登頂したのか。六つの観点から、ファーストクライマーを解き明かしていく。あまたの文献にあたり、各方面の専門家に聞き取りをするだけでなく、探検家である著者自ら何度となく剱岳に登り、古代登頂者の足跡を丁寧に検証しているために、臨場感たっぷりの立体的な考察となっている。

 カニのたてばい、よこばい、ガキガンドウ、平蔵のずこなど、登頂ルートには不思議な地名が点在する。剱岳が抱く多彩な顔に触れつつ、真相に迫りゆく過程には否応いやおうなく引き込まれる。山伏の修行か、それとも国家鎮護の祭事か。本書には大正期の登山者の写真も掲載されるが、現代の登山装備とは比較にならないほど軽装。江戸時代は草鞋わらじ脚絆きゃはんで登ったというから、その以前となると。

 平安初期に立山を開いた慈興上人じこうしょうにんが初登頂者ではないか、と著者は早い段階で目星をつけるも、あらゆる可能性を確かめるため、別山べっさん尾根ルートから早月はやつき尾根ルートへと経路を変更、仏具が収められていたと見られる岩穴を根気強く探し続ける。これにより仮説は大きく覆り、想像だにしなかった人物が浮かび上がるのだ。彼らはなぜ、命の危険を冒してまで、このような嶮岨けんそな山を登ったのか――最後の謎が解けたとき、いにしえ人の真摯しんしで清廉な願いと、深く根ざした自然崇拝の精神に触れた気がして、心揺さぶられた。

 それは、剱岳という偉大な山の息吹に包まれつつ、文明の利器に溺れる中でいつしか忘れていたことがよみがえってくるような感触だった。

 ◇たかはし・だいすけ=1966年、秋田市生まれ。探検家。『ロビンソン・クルーソーを探して』など。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
1520015 0 書評 2020/10/04 05:00:00 2020/10/13 09:35:14 剱岳ー線の記(18日、本社で)=上甲鉄撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201003-OYT8I50050-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)