幻のアフリカ納豆を追え! 高野秀行著 新潮社 1900円
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驚くべき納豆の実態
評・仲野 徹(生命科学者・大阪大教授)
納豆というと日本の食べ物という印象が強い。しかし、この本では、高野秀行が西アフリカのナイジェリア、セネガル、そして韓国で、納豆を食する人々にぐいぐい迫り、我々が抱いているそのような先入観を次々と覆していく。
ミャンマーでアヘン中毒になったり、ソマリアで命懸けの取材をしたり、アルコールを禁じられているイスラム諸国で飲酒し続けたりと、誰にも
高野にとって『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』に次ぐ2冊目の納豆本だ。ミャンマーで卵かけ納豆ご飯を食べる人々を見た衝撃が、世界における納豆を調べようとしたきっかけだった。取材で何を見ても驚き続けた『アジア納豆』から早4年、この『アフリカ納豆』では少々のことには動じず、大家のような風格で納豆の謎に分け入っていく。
アフリカの納豆地域はイスラム過激派の活性化地域と重なっているから「納豆が陰でイスラム過激派の糸を引いている」のではないか。など、鋭い(?)仮説を立てては検証していくという、学問的(かもしれない)進め方だ。
日本でもアフリカでも、納豆といえば納豆菌を使った発酵食品である。しかし異なっている点も多い。大豆ではなくパルキア豆の納豆がメインである。料理の味付けに使われることが多い。さらに、ハイビスカスやバオバブまでと材料は多様性に富んでいる。など、驚くべきアフリカ納豆の実態が次々と明らかにされていく。
ラストは、世界中から集めた納豆菌で大豆の納豆を作り、どれがいちばん
最後に高野の下した結論は「世界最大の納豆地帯は西アフリカである」だ。さて、みなさんは納豆、じゃなくて、納得されるだろうか。