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スポーツを変えたテクノロジー スティーヴ・ヘイク著 白揚社 2400円

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技術者たちの試行錯誤

評・木内 昇(作家)

◇Steve Haake=スポーツ工学者。英国でスポーツ工学を世界的な研究分野に育て上げ、初の学術誌を創刊。
◇Steve Haake=スポーツ工学者。英国でスポーツ工学を世界的な研究分野に育て上げ、初の学術誌を創刊。

 2008年の北京オリンピックで、「LZR」なる新型水着が話題をさらったことをご記憶の方も多いのではなかろうか。水の怪物、マイケル・フェルプスをはじめ金メダル獲得者の多くが身につけ、大幅にタイムを縮めた一方で、「技術的ドーピングにも等しい」との声も出て物議を醸した。しかし、疎水性のラミネート素材とナイロン、エラステインを組み合わせて表面摩擦を減らしたLZRより機能性の高い水着が、早くも翌年誕生する。全身ポリウレタンの「Xグライド」だ。実際この水着を着用したパウル・ビーダーマンが、フェルプスを破るという快挙を成し遂げた。用具の進化によって、その競技自体が形を変えていく。90年代前半まで「スポーツ工学者」と名乗ると気まずい雰囲気になった、と著者のヘイク氏は語るが、今やスポーツは、工学であり統計分析学であり科学なのだ。

 では、現代の選手が80年ほど前のシューズで走るとタイムはどれほど落ちるのか。フットボールの素材が豚の膀胱ぼうこうからゴムに変わったことで、ボール操作はどのように変化したか。テニス、ゴルフ、スケート他、競技の歴史を振り返りつつ実験、検証していく。19世紀に考案されたクロノフォトグラフィ(動体記録連続写真)やその後のストロボスコープにより、人体の複雑な動きが解明され、より機能的な身体の使い方が分析されていく過程も含め、技術者たちの試行錯誤がユーモアも交えてつづられるのだ。

 今や記録更新のため、脳の運動皮質を電気で刺激するシステムや幹細胞治療が導入されているらしい。もはやSFの領域。練習中水を飲むな、うさぎ跳びで校庭一周など、実はパフォーマンス低下につながる刻苦を根性論のもとこなしていた時代は遠い。スポーツ工学の向上速度にしびれる一方で、若い頃上司にしかられ精進してようやく上の立場に立った今、万事パワハラで片付けられてなにも言えなくなった50代の悲哀にも似た感慨も覚えるのだった。藤原多伽夫訳。

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1627094 0 書評 2020/11/15 05:00:00 2020/11/24 11:14:02 書評 「スポーツを変えたテクノロジー」 スティーヴ・ヘイク(1日、東京都千代田区で)=若杉和希撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201114-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

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