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旧約聖書 〈戦い〉の書物 長谷川修一著

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「対立」で読み解く歴史

評・山内志朗(倫理学者・慶応大教授)

慶応義塾大学出版会 2400円
慶応義塾大学出版会 2400円

 旧約聖書をどう読むべきか。読み始めた人は複雑多岐な歴史と人名の列挙の中で迷子になる。一貫した思想を読み取ろうとする努力をしのぐ複雑さと難解さがある。

 本書は迷わないための道筋を示す。人名の列挙も血統の追跡可能性を示し、原初の契約が現在でも継続することを示す根拠になる。旧約聖書を、相対立する勢力の拮抗きっこうする書物として見ると変わってくる。

 本書は六つの〈戦い〉を基軸とする。「イスラエル」という地域の誕生、神のアイデンティティ、「真のイスラエル」の担い手、祭司の正統性、「神の言葉」、異民族との結婚はそれぞれ戦いだった。

 旧約聖書の最初の五つの書「律法」にはユダヤの歴史が刻み込まれている。紀元前七世紀ごろのヨシュア王の治世での改革(「申命記革命」)が断行され、その後、バビロン捕囚を迎える。政治と宗教をめぐる大改編が、諸血統の勃興と衰退を引き起こし、様々な戦いの一筋を形成した展開は手に汗握る展開である。

 預言者モーセの血統(ムシ族)と、モーセの兄アロンに由来する血統は、北イスラエル王国と南ユダ王国の興亡の中で、支配と従属をめぐって、権力と職分をめぐる「戦い」の中にあった。民族の代表的な血統の流れと、ユダヤ教の宗教組織とその内部におけることわりの対立構図が見えてこそ、旧約聖書のなかの大きな歴史の筋道が浮かび上がってくる。

 旧約聖書は、新約聖書を準備したものとしての読み方もあるが、本書は、古代に成立していた世界システムの激動を示す解説書とみる。

 とりわけ、神ヤハウェをめぐる戦いは、一神教成立の様を解明する。祭りをつかさどるレビ人とは何かを説明しながら、聖職者たちの中での多くの階層の存在とそれらの軋轢あつれきを読み取り、旧約聖書の舞台裏を示す。預言者と祭司の関係に、旧約聖書の書き手とユダヤ教の担い手との対立が示されるなど、旧約聖書への関心をいやが応でも高めてくれる本だ。

 ◇はせがわ・しゅういち=1971年生まれ。立教大教授。専門はオリエント史。著書に『聖書考古学』など。

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1660831 0 書評 2020/11/29 05:00:00 2020/12/07 11:25:49 「旧約聖書」(16日、読売新聞東京本社で)=橘薫撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201128-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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